「妊娠中、食事で気をつけることを教えてください」——食卓アドバイザーはやまに相談してみたら

妊娠中のママと食事

「妊娠がわかりました。食事で気をつけることを、教えてください」

こんな相談をいただきました。30代、第一子を妊娠中のママさんです。

妊娠とわかった瞬間から、急に食べ物が怖くなる——そんな声をよく聞きます。これは食べていいのか、あれはダメなのか。スマホで調べれば調べるほど、禁止事項のリストが増えていく。

カフェインはどうなのか、刺身は食べていいのか、ハーブティーは——。食事のたびに緊張している、という方も少なくありません。

ひとつだけ、お伝えしたいことがあります。妊娠中の食事は、特別なことをする必要はありません。

はやま

妻が第一子を妊娠中、産院で入院中に、助産師さんからお酒と胎児への影響についてくわしく説明されたそうです。「からだが冷たくなった」と、あとで教えてくれました。妊娠初期に、少しだけ口にしてしまっていたからです。知らなかっただけ、です。でも知ってからは変わった。食事というのは、そういうものだと思います。

3つだけ、覚えておいてください

情報は多いほど不安になりやすい。だから絞ります。妊娠中の食事で意識してほしいことは、突き詰めると3つです。

① 葉酸——赤ちゃんの「神経」をつくる

葉酸は、ビタミンB群の一種です。赤ちゃんの脳や脊髄のもとになる「神経管」の形成に深く関わっているといわれています。

妊娠初期、神経管は驚くべき速さで発達します。このとき葉酸が不足すると、その発達に影響が出る可能性があるとされており、厚生労働省は妊娠前からの積極的な摂取を推奨しています。「妊娠してから慌てて摂る」より「妊娠前から摂っておく」のが理想とされているのは、そのためです。

食品では、ブロッコリー、ほうれん草、アスパラガス、枝豆、納豆などに多く含まれています。ただし葉酸は熱に弱く、加熱調理でかなり失われます。食事だけで補いにくい場合は、サプリメントを活用する方法も広く取り入れられています。

はやま

納豆は発酵食品としても優秀で、葉酸も含まれているありがたい食材です。「妊娠をきっかけに毎朝食べるようになった」というママさんの声、けっこう多いですよ。

② 鉄分——ふたり分の血をつくる

妊娠中は、おなかの赤ちゃんのぶんまで血液を増やす必要があります。赤ちゃん自身も成長とともに自分の血をつくりはじめます。このため妊婦さんは通常より多くの鉄分が必要とされており、鉄分不足による貧血は妊娠中の代表的なトラブルのひとつです。

動悸、息切れ、疲れやすさ——これらは貧血のサインかもしれません。産後の体力回復にも影響するといわれているため、妊娠中から意識しておくと安心です。

肉・魚・レバーなどの動物性食品に含まれる「ヘム鉄」は、植物性食品の鉄分より吸収されやすいとされています。週に一度、豚レバーや鶏レバーを取り入れてみるのもひとつの方法です。ビタミンCと組み合わせると吸収を助けるといわれています。

はやま

妻はこの時期、レバニラをよく食べていました。「においが苦手だったけど、湯通しすると全然ちがう」と教えてくれました。ひと手間ですが、続けるコツとして。なお、レバーにはビタミンAも豊富なため、妊娠初期は食べすぎに注意が必要とされています。かかりつけの先生にも確認してみてください。

③ バランス——「抜かない」ことが、いちばん大切

葉酸と鉄分を意識しながら、あとは「バランスよく、抜かない」こと。これだけです。

妊娠中は食欲が落ちる時期もありますが、特定の栄養素だけを摂れば事足りる、というわけではありません。主食(炭水化物)、主菜(たんぱく質)、副菜(野菜・きのこ・海藻)がそろった食事が、日々の基本になります。

難しく考えなくても大丈夫。一汁三菜のかたちに近づけるだけで、自然とバランスが整います。

はやま

ごはん、みそ汁、焼き魚かお肉、野菜の煮物——。昔の日本人が当たり前のように食べていたものは、実はこの「妊娠中に必要な食事」にかなり近いのです。特別なことを始めるより、日本の食卓に戻ることが、いちばんの簡単な答えかもしれない、といつも思います。

お酒とタバコについて

妊娠中のお酒は、量に関わらず控えることが推奨されています。アルコール分子は非常に小さく、胎盤を通っておなかの赤ちゃんに届くといわれています。とくに器官が形成される妊娠初期は、影響を受けやすい時期とされています。タバコも同様です。

「妊娠に気づく前に飲んでしまった」という場合は、まず自分を責めすぎないでください。そのうえで、気になることはかかりつけの医師に相談してみてください。

はやま

「知らなかった」は怠慢ではありません。でも知ってからは変わる。妻がまさにそうでした。「あのとき助産師さんに話してもらえてよかった」と、いまでもいいます。

妊娠は、食卓を見直す最初のきっかけ

妊娠中の食事を整えることは、赤ちゃんのためだけではありません。あなた自身のからだをつくることでもあります。

妻は出産後こういっていました。「妊娠中に変えた食習慣、産んでからもそのまま続いてる」と。妊娠をきっかけにした変化は、意外なほど長続きするものです。

葉酸と鉄分を意識して、バランスを整える。それだけで十分なスタートです。

今夜のごはんを、赤ちゃんとふたりで食べている——。そんなイメージで、食卓を用意してみてください。


【注記】この記事は、過去の体験記録をもとに食生活アドバイザーの立場から執筆しています。葉酸・鉄分の推奨摂取量など、妊娠中の食事に関するガイドラインは、厚生労働省によって更新されている場合があります。最新の情報は、かかりつけの産婦人科・助産師にご確認ください。本記事は医療的な診断・治療を目的としたものではありません。