一汁三菜、はじめました。——しんどくない、続けられる、日本の食卓の話

一汁三菜

突然ですが、告白があります。

わたしはかつて、食事をこじらせていました。

体を壊したことをきっかけに、食の勉強を始めたのはよかったのですが、知識が増えるにつれて「体に悪いもの」がどんどん増えていきました。グルテンはダメ、白砂糖はダメ、添加物はダメ、加工食品はダメ——。気がつけば食卓から排除するものだらけになって、何を食べればいいのかわからなくなっていました。

そんなとき、一冊の本に出会いました。料理研究家の土井善晴さんが書いた本で、「一汁一菜でよい」という、拍子抜けするほどシンプルな提案が書いてありました。

「もういいよ」と言われた気がしました。勝手に(笑)。

そこからです。ごはんと味噌汁を中心に据えた、一汁三菜の食卓を意識するようになったのは。

一汁三菜って、そもそも何ですか

あらためて整理すると、一汁三菜とは「ごはん・汁・主菜・副菜・副副菜」の五つで構成される、日本の伝統的な食事スタイルのことです。

難しそうに聞こえますが、要するにこういうことです。

ごはんと味噌汁があって、メインのおかずが一品、副菜が一品、漬物がひとつ——それだけです。

このスタイル、栄養バランスの面でも世界的に高い評価を受けています。炭水化物、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラル、発酵食品まで、ひとつの食卓でごく自然にそろってしまう。ユネスコの無形文化遺産にも登録された「和食」の根幹を支えているのが、この一汁三菜という考え方です。

でも、わたしが一汁三菜に戻ってきた理由は、栄養バランスがどうこうではありませんでした。ただ、「これでいい」と思えたからです。

葉山の一汁三菜、定義と基本ルール

うちの一汁三菜は、こんな感じです。

——ごはん(玄米でも分づき米でも白米でも、その日の気分でいい)
——お味噌汁(本物の味噌と出汁で。忙しければだしの素でも十分)
主菜——肉、魚、卵、豆類から一品
副菜——野菜や海藻の作り置き(きんぴら、煮物、煮びたしなど)
副副菜——ぬか漬けか浅漬け

基本の考え方は、日本の食べ物を、旬のものを、できるだけまるごといただく。そしてよく噛む。それだけです。

味噌汁の出汁は、料亭のような丁寧なものでなくていい。いりこを五、六匹ほど鍋に放り込んで、具材と一緒に煮るだけでも十分においしくなります。いりこも食べてしまえば、一物全体でカルシウムまでとれます。無添加のだしパックを使う日があってもいい。

副菜は週末にまとめて作り置きしておけば、平日は盛りつけるだけです。きんぴらごぼう、なすの煮びたし、ひじきの煮物——これらは三日から四日、冷蔵庫で保存できます。

はやま

完璧にやろうとしなくていいのです。「だいたいこの形」を意識するだけで、食卓はずいぶん変わります。

なぜ一汁三菜が体にいいのか

一汁三菜が体によい理由は、栄養バランスだけではありません。

まず、主食がごはん(米)であること。米は腸への刺激が穏やかで、血糖値をゆっくり上げます。脳のエネルギーが安定して供給されるため、気持ちが落ち着きやすくなります。小麦を主食にしていたときと比べて、「なんとなくイライラしにくくなった」という声をよく聞きます。

次に、味噌汁があること。発酵食品である味噌は、腸内環境を整えます。腸は「第二の脳」とも言われていて、腸の状態が気分や感情に直結しています。毎日の味噌汁一杯が、体だけでなく心の安定にもつながっているのです。

そして、漬け物があることぬか漬けをはじめとする発酵漬け物は、生きた乳酸菌の宝庫です。腸活という言葉が広まりましたが、毎日の食卓に漬け物が一品あるだけで、サプリメントより手軽に腸内環境を整えることができます。

栄養学的な話をすればきりがありませんが、要するに一汁三菜とは、日本人の体が何百年もかけて「これが合う」と答えを出してきた食事スタイルです。理屈より先に、体がそれを知っています。

続けるための、葉山流の考え方

一汁三菜を始めようとして挫折する理由は、たいていひとつです。完璧にやろうとするからです。

主食は玄米でなくてもいい。白米に少し麦を混ぜるだけでも十分です。副菜が作れない日は、スーパーの惣菜でもいい。漬物はチューブの浅漬けの素で十分です。

大切なのは「形を整えること」ではなく、「この食卓の形を意識し続けること」です。

わたし自身、体を壊してから食の知識を集めすぎた結果、何も食べられない時期がありました。あのときわたしに必要だったのは、もっと多くの知識ではなく、「ごはんと味噌汁でいい」というシンプルな許可だったと、今ならわかります。

一汁三菜は、がんばるための食事法ではありません。力を抜いて、長く続けるための食事の形です。

はやま

凝った料理を作れない日こそ、ごはんと味噌汁に戻ってみてください。それがいちばんの「ちゃんとした食事」ですから。