寝ているあいだ、脳は働き、体は整っていく——明日が変わる睡眠の秘密

睡眠中の女性

仕事柄、脳科学者に取材する機会が何度かありました。

本を読みあさり、質問を準備し、話についていけるだろうかと緊張しながら取材に行く。 すると毎回、こちらの常識を軽々とひっくり返す話が飛んできました。

なかでも衝撃だったのが、これです。

「睡眠中、脳は休んでいない」

いやいや、寝てるんだから休んでるでしょ。 そう思いますよね。わたしもそうでした。

でも話を聞くうちに、じわじわと理解したのです。

——睡眠は、脳にとって「作業時間」だった。

わたしたちはずっと、睡眠を「何もしていない時間」だと思っていた。 でも実際は、脳がいちばん働いている時間だったのです。

眠っているあいだ、脳は何をしているのか

脳は夜になると、昼間の情報をせっせと整理し始めます。

  • 必要な記憶を長期保存へ
  • いらない情報を削除
  • 断片的な情報をつなぎ合わせてアイデアをつくる

「寝たら答えが出た」「朝起きたら文章がすらすら書けた」—―あれは偶然ではなく、 脳が夜のあいだに仕事をしてくれた結果です。

さらに最近注目されているのが「脳の清掃システム」です。

睡眠中、脳脊髄液が脳内を流れ、 アミロイドβなどの老廃物を洗い流すことがわかってきました。

つまり——。

眠ることは、脳の大掃除なのです。

はやま

この話を聞いた日、寝ることへの罪悪感を捨てました。忙しいからこそ寝る。これが正解。

成長ホルモンと、肌のゴールデンタイム

昔は「22時〜2時がゴールデンタイム」といわれていましたが、 最近の研究ではこういわれています。

——入眠後、最初の3時間の深睡眠が勝負。

成長ホルモンは、

  • 子どもの成長
  • 大人の細胞修復
  • 肌の再生
  • 疲労回復

に欠かせないホルモンです。

つまり、 何時に寝るかより、どれだけ深く眠れるかが大事なのです。

はやま

子どものころ「寝ないと背が伸びないぞ」といわれたのは、科学的にも正しかった(笑)

睡眠不足が体と脳に何をするか

睡眠を削ると、体は静かに反乱を起こします。

まず、記憶と学習能力が落ちます。昼間に一生懸命インプットしたことも、睡眠中の整理作業がなければ定着しない。徹夜で詰め込んだ記憶がすぐ消えるのは、そのためです。

お肌が荒れます。入眠後の深い眠りのなかで成長ホルモンが分泌され、肌の細胞が修復されます。だから睡眠が足りないと、修復が追いつかない。くすみ、乾燥、ニキビ——。肌トラブルが続くとき、スキンケアを見直す前に睡眠時間を確認してみてください。どんなに高価なクリームも、睡眠の代わりにはならないのです。

髪や爪も同じ。成長ホルモンは肌だけでなく、髪や爪の細胞分裂にも関わっています。睡眠不足が続くと、髪のコシがなくなったり、爪が割れやすくなったりすることがあります。

さらに太りやすくなる。睡眠不足では食欲を増進させるホルモンが増え、食欲を抑えるホルモンが減る。血糖値のコントロールも乱れやすくなります。ダイエットをがんばっているのに結果が出ないのは、睡眠が足りていないせいかもしれません。

免疫力も低下します。睡眠中に免疫細胞が活性化され、体の修復が行なわれます。睡眠不足が続くと風邪をひきやすくなるのは、気のせいではありません。

そして感情が不安定になります。「今日はなんかイライラする……」——その前夜、たいてい睡眠が足りていません。

はやま

子どもが荒れているとき、まず睡眠時間を確認します。夜更かしした翌日の子どもは、別人。大人も同じですが(笑)

何時間眠れば十分なのか

「自分は短時間睡眠でも大丈夫」

そう思っている人はわりと多いのですが、研究ではこういわれています。

——本当に短時間睡眠で平気な体質の人は、人口の5%。

残りの95%は、ただの「思い込み」なのです(笑)

理想は 7.5時間(90分×5サイクル)。 最低でも6時間。6時間を切ると脳のパフォーマンスが極端に低下することが、複数の研究で確認されています。

起きる時間から逆算して寝ると、朝が楽になります。

昼寝という、賢い選択

午後に集中力が落ちてきたら、 20分の昼寝が効果的。

脳の疲労がリセットされて、午後のパフォーマンスが戻ります。

それ以上眠ると、逆にぼんやりしやすくなります。

はやま

「昼寝はさぼりじゃない」というテーマで書いた記事がこちら。よく寝る親子――わたしと娘の話です(笑) よろしければどうぞ。

眠れないときは

眠れないときのセルフケアについて、いくつかの記事でくわしく書いています。

睡眠は、最高の自己投資

脳科学者に取材して、 いまも心に残っている言葉があります。

「睡眠は自己投資です」

睡眠を削ることは努力ではなく、 脳と体が必要としている作業時間を奪う行為でした。

逆にいえば——。

しっかり眠るだけで、 記憶は定着し、 体は修復され、 免疫は保たれ、 感情は安定する。お金もかからない。道具もいらない。ただ、眠ればいい。

今夜、少しだけ早く布団に入ってみてください。あなたの脳と体が、その時間を使って静かに働き始めます。