「パパと息子がバカで困ってます」——食卓アドバイザーはやまに相談してみたら

食卓の風景

——パパと息子がバカで困ってます。いつもふざけてばっかりで、お風呂あがりには二人でふりふりふり~って(笑) 二人とも本の一冊も読まない。私が読書してると変顔をつくって邪魔しにくるんです。ママの顔まね~って。ほんと、バカ。失礼しちゃうわね(笑) というわけなので、せめて子どもだけでももっとお利口になる食事なんてありませんか?

今回の相談内容はこちら。メーカー勤務の、30代のお母さんからです。

読んでいて、頬がゆるみました。少し、うらやましくもなった。いいご家族だなあ、と。

でも、ご相談いただいた以上は、腸と脳の話をきちんとしておきましょう。せっかくですから、ね(笑)

腸は、「第二の脳」である

腸脳軸ちょうのうじく」という言葉があります。腸と脳は迷走神経という太い神経でつながっていて、おたがいに信号を送りあっている、これが現代科学で主流となっている考え方です。

腸には1億個以上の神経細胞があるといわれています。そこでも脳と同じように情報を処理している。腸が「第二の脳」と呼ばれるゆえんです。

そして、実はここがいちばん大事なのですが、幸福感に関わるセロトニンの約90%は、脳でなく腸でつくられている。ドーパミンやGABAといった神経伝達物質の材料も、腸内細菌がつくりだしているのです。

つまり、腸の状態がそのまま気分や思考に影響するという話。

「なんとなく気分が重い」「集中できない」「すぐイライラする」——こういう精神状態の裏には、腸内環境の乱れが関わっていることも少なくない、そういう考え方があるわけです。

はやま

腸と脳のつながりについては、UCLAのゴメス・ピニリャ博士らが精力的に研究を続けています。「食べたものが気分や思考をつくる」というのは情緒的な表現でなくて、科学的な話なのです。

脳にいい食べ物、悪い食べ物

——それならさっさと脳にいい食べ物のことを教えてよ、バカなんだから、もう……(葉山、幻聴を聞く)

はい、すみません。いまからお話ししますね。

研究が繰り返し示しているのは、青魚(DHA・EPA)、発酵食品、食物繊維、抗酸化物質(緑茶、ブルーベリー、カカオほか)が腸内細菌を整えて、脳の炎症を抑え、記憶や学習にいい影響をもたらすということ。

反対に、精製された砂糖、トランス脂肪酸は、記憶力の低下や脳の炎症と関連するという報告もあります。加工食品の食べすぎには気をつけたいところですね。

はやま

青魚については、わが家で10年かけて実践してきた話をこの記事に書きました。よかったら読んでみてください。→子どもの脳は、食卓でつくられる——青魚を食べさせ続けた十年間の話

だからご主人と息子さんに青魚をせっせと食べさせて、発酵食品も出して、腸内環境を整えましょう、といいたいところなのですが……。

ちょっと待ってください

相談文を読み返してみます。

まず「ふりふりふり~」が気になりました。いったい何を?

失礼……。

「いつもふざけてばっかり」

「変顔をつくって邪魔しにくる」

「ほんとバカ(笑)」

なんにせよ、お宅のご主人と息子さん、たぶんこれ以上ないくらい健康体です。腸が元気な人というのは、明るくて、よく笑い、エネルギーに満ちあふれている。セロトニンやドーパミンが出やすい状態というのは、まさにそれです。

変顔を思いついて、実際にやって、けらけら笑い合える——。むしろ、腸と脳が最高に仲よくやっているサインだろうなとわたしは思います。

そこへ腸が元気になる食事をさらにプラスしたら、どうなるか。

変顔の精度と回数があがるだけかもしれませんね。

はやま

心が穏やかでリラックスしていないと、変顔なんてできませんよ。気分が滅入っていたり、ストレスを感じていたら、顔の筋肉や神経がこわばっていて、笑おうとしても顔が引きつりますよね(笑)

バカを再定義する

ここで「バカ」という言葉の意味を再確認しておきます。

本を読まないからといって、知能が低いわけではありません。本をたくさん読むからいって、IQが高いというわけでもない。

たしかに読書は語彙を増やす。思考力を高めて、想像力を広げます。成長期の子どもには、本を読む習慣はそれなりに大事だとわたしも思います。けれどそれは、今回の相談の内容とはちょっと異なります。

そもそも相談者のお母さんは「バカ」を知能が低いというような意味では使っておられない。そのことに自分でも気づいておられるはずです。

腸内環境の改善や、食事の見直しが本当に力を発揮するのは、「集中できない」「気分が沈みがち」「感情のコントロールが難しい」といった、日常生活に支障が出ているケースです。そんなときは、腸と脳のつながりを意識した食事が助けになってくれる。

でも今回のご相談は、そういう状況ではありませんね。

なにしろ、ふりふりふり~、ですから。

はやま

今回のご相談とは打って変わって、すこし深刻なケースについて以前書いたことがあります。→みそ汁ひとつから——ゲーム・暴力・ADHD、ある家族の話

変顔しているうちが花

いつか、お子さんもお母さんの前で変顔をしなくなる日がきます。

やがて思春期がきて、パパとふざけることを恥ずかしいと感じる日もきます。パパだって「ふりふりふり~」をする元気がなくなる日がくるかもしれません。

いまあなたが見ているのは、二人が全身で表現する、ママへの愛です。

青魚は、気が向いたときに食卓に出してあげてください。腸にも脳にも、きっといい。ただし今回のご相談への回答は——。

おバカなパパと息子さんを、笑って受けとめてあげてください。できたら変顔を返してあげてください。ふりふりふり~をいっしょにしてみてください。無理か(笑)

でもそれが、いちばんの処方箋だと思いますよ。