朝のイライラは、あなたのせいじゃない——食卓アドバイザーはやまに相談してみたら

味噌汁と納豆

——朝、子どもに怒鳴ってしまう。また今日もやってしまったって、胸の奥がズキッと痛むんです。毎日、自己嫌悪で……。

こんな相談を受けることがありますが、それはあなたのせいではありません。

生来の気性が激しいからでも、意志が弱いからでも、ダメなお母さんだからでもない。腸が怒っているだけ。もう少し正確に言うと、朝の腸の状態がそのままあなたの気分になっている。

はるか昔、僕らはなまこだった

太古の昔、わたしたちの祖先はなまこのような生き物だった——。どこかでそんな話を聞いたか読んだかしたことがあります。信憑性は保証できませんが、そのころは消化管だけが体のすべてで、食べて、消化して、排泄することだけが仕事だったそうです。

実際、いまでも原始的な生物(ヒドラや扁形動物など)は基本的に消化管が体の中心です。ありうる話ではある。

その後、移動するために手足ができ、食べられるものを増やすために胃や消化器が複雑になり、解毒のために肝臓や腎臓が発達し、高度な活動のために肺や心臓が進化した。脳がいまのような形になったのは、ずっとあとのことです。

つまり人間の体は、腸ありきで設計されているのかもしれない。

腸の気分がそのまま脳に伝わるというのは、面白い話だし、生理学的にも事実です。近年、腸脳相関と呼ばれる現象が注目を浴びていますが、わたしには新たな科学的発見というより、昔から皆が薄々勘づいていたことがやっと証明されただけのように思えます。お腹と性格や気分との関係を表わす慣用句はたくさんあるわけですしね。

——腹が立つ、腹が煮えくり返る、腹が座る、腹が冷える、腹黒い、腹に一物ある、腹に落ちる、腹を決める、腹が座らない、腹の虫がおさまらない……。

つまり、人間の体は腹中心、つまり腸中心で進化してきたのかもしれない。そう考えると、朝の気分が腸に左右されるのは、とても自然なことだと思いませんか。

朝の腸の状態が、その日の気分を決める

わたし自身の話をします。

便秘気味のとき、あるいは前の晩に質の悪い油で揚げた唐揚げやてんぷらなんかをたくさん食べた翌朝——。外部からの刺激に対する反応が変わるのがはっきりとわかります。腹を立てるようなことではないのに腹が立つ。気にするようなことではないのに妙に気になる。同じ出来事でも、腸の状態によって受け取り方がまったくちがう。

少し離れた場所から自分の心理状態を観察する癖がついているので、感情に完全に飲み込まれてしまうことは少ないのですが、それでも抑えきれないことがある。そんなときは「ああ、今日は腸が怒っているな」と思うことにしています。

腸が勝手にやっていること。だからあまり気にするなと。

朝のイライラも、同じです。睡眠中に腸は一日の疲れをリセットしようとしています。腸内環境が乱れていると、朝起きたときからもう腸は機嫌が悪い。その機嫌の悪さが、そのままあなたの機嫌になる。

腸の機嫌が悪い、三つの理由

① 血糖値

朝は皆、血糖値が下がっています。低血糖というのは、脳のエネルギーが枯渇している状態で、判断力は低下し、感情のコントロールも難しくなります。些細なことで怒鳴ってしまうのは、脳がガス欠を起こしているサインでもあるのです。

朝いちばんに白湯をコップ一杯飲んで水分を補給し、それから朝食をしっかり食べる。朝食を抜かない。当たり前の習慣が、血糖値を安定させてくれます。

② マグネシウム

マグネシウムは「ストレス対抗ミネラル」と呼ばれています。神経の興奮を抑え、イライラをやわらげる働きがあるからです。ただ現代の食生活では不足しやすく、ストレスが多い生活ではさらにマグネシウムの消費が進みます。

食事から摂るなら、ひじき、わかめ、海苔、納豆、豆腐、ごま、くるみあたりがおすすめ。わたしはご飯や料理ににがり(主成分は塩化マグネシウム)を少し加えることで日常的に補うようにしています。

浴槽ににがりを溶かすこともあります。経皮吸収——皮膚から吸収できるという話を聞いたことがあるからです。そのあたり研究中のようですが、疲れた日に入浴剤として使うと、気分がはっきりと良くなるのを感じます。娘に「今夜はにがり温泉だぞ」と言うと、決まって「わーい!」とうれしそうな声が返ってくる。その声を聞くだけでもちょっと元気になれます。

③ 疲れた腸

さきほどお話しした通り、腸の状態は朝の気分に直結しています。前夜の食事が腸に負担をかけるものだった場合、翌朝の腸は疲弊しており、そこから一日を始めることになります。

朝の食卓

まず、白湯を一杯

起き抜けの体は軽い脱水状態にあります。白湯をゆっくり飲むことで、眠っていた腸が目覚めます。冷たい水ではなく白湯がいいのは、腸を冷やさないため。体温に近い温度の水が、腸にはいちばんやさしい。我が家では、朝いちばんに白湯を飲むのが小さな儀式になっています。

朝食に発酵食品をひとつ

朝から腸に善玉菌を届けることで、その一日の腸内環境のスタートラインが変わります。納豆でも味噌汁でもぬか漬けでも良い。どれかひとつを朝食に加えるだけで、腸の機嫌が変わります。

朝日を五分、浴びる

朝日を浴びることで体内時計がリセットされ、セロトニンの分泌が促されます。ベランダでも窓際でもいいので、晴れた日は五分だけ、曇りの日なら15分、外の光に当たる。腸の話ではありませんが、朝のイライラに対してこれほど即効性のある習慣はなかなかないと思います。

夜の食卓が、翌朝を決める

朝のイライラを減らすためのいちばんのカギは、前日の夕食(あるいは夜食)です。腸に負担をかける食生活を続けていると、翌朝の腸は疲れています。反対に前の日に腸にやさしい食事を摂ると、翌朝の目覚めは目に見えて変わります。

朝のイライラを減らしたいと思うなら、感情を思考でコントロールしようとせず、前夜の食卓を整えることにまずは目を向けてみてください。