一周して、帰ってきた。——おかえり!のお茶案内

日本茶

世界中のお茶を飲んできたと思います。

カモミール、ルイボス、パウダルコ、スリッパリーエルム——。名前を聞いただけでは何のお茶かわからないものまで、ひと通り試しました。それはそれでおもしろい経験でしたが、一周してみて気づいたことがあります。

結局、日本のお茶が好きだ、ということです。

はやま

そういうものなんでしょうね(笑)。遠回りして、当たり前のところに帰ってくる。

このブログでも、気づけばお茶の記事がずいぶん増えました。ここでまとめて案内しておきます。

煎茶——日本でいちばん飲まれてきたお茶

日本茶の代表格です。摘んだ茶葉を蒸してから揉んで乾燥させる、この「蒸す」という工程が、中国茶と日本茶を分けた大きな違いです。

取材で茶農家を訪ねたとき、富士山を望む斜面に広がる茶畑の美しさに、しばらく言葉を失いました。あの景色は、いまでも頭に残っています。浅蒸しと深蒸しの違い、職人の火入れとブレンドの技——。煎茶の奥深さを知ったのも、あの取材です。

祖父母の家には、いつも煎茶がありました。食後の一杯は当たり前のことで、誰もわざわざ「お茶を飲もう」とは言わなかった。急須に茶葉を入れて湯を注ぐ、その所作が家の空気の一部でした。

茶柱が立つと、いいことがある。——富士を望む茶畑で知った煎茶の話

番茶——煎茶の陰に隠れた、もうひとつの日本茶

煎茶が春の新芽(一番茶・二番茶)を使うのに対して、番茶は夏以降に育った硬めの葉や茎を使います。規格外の葉が使われることも多く、煎茶より安価です。

カフェインが少なく、後味がすっきりしています。渋みも控えめで、子どもやお年寄りにも飲みやすい。かつての日本の家庭では、煎茶より番茶のほうが日常の飲み物として親しまれていました。

ほうじ茶は、この番茶(や煎茶)を強火で炒ったものです。香ばしい香りはその炒る工程から生まれます。

はやま

わが家の日常茶はハト麦茶かほうじ茶が多いのですが、番茶はひそかに見直しています。カフェインが少ないぶん、夜にも飲みやすい。

梅しょう番茶——有機農家のお母さんに教わったセルフケア

もう十年以上前の話です。取材で訪ねた有機農家のお母さんが、どこかくたびれた顔をしていたわたしに、黙ってこれを出してくれました。

梅干しをマグカップの底でつぶして、番茶を注いで、醤油を少し垂らして、すりおろした生姜。飲み終えたあと、体の芯がじんわりと温かくなりました。あの感覚はいまでも覚えています。

「これ、なんですか」と聞いたら、「梅しょう番茶。昔からあるやつよ」と笑っていました。

体の中から火が灯る——梅しょう番茶という、古くて新しいセルフケア

どくだみ茶——あの匂いが嘘のような話

庭に生えているどくだみを見て、「これがお茶になるの?」と思う方も多いかもしれません。あの独特の青臭さからは想像しにくいのですが、乾燥させて煮出すと、やや甘みのある飲みやすいお茶になります。

はやま

うちの娘は、お茶の中でどくだみがいちばん好きだと言っていました。

毒溜め、と呼ばれた草のお茶

ハブ茶——毒蛇は入っていません

「ハブって、あの毒蛇の?」

妻と娘にむかし実家で飲んでいたお茶の話をしたとき、そう聞かれました。「そう。ハブを漬け込んだお茶だよ」と答えると、二人の顔が同時にゆがみました。

もちろん冗談でした。ハブ茶の正体はエビスグサという植物の種を煎じたもので、毒蛇とは何の関係もありません。父が畑でエビスグサを育て、母が毎年収穫して手作りしていました。

ハブ茶は、毒蛇を漬け込んだお茶?——変なお茶と、母の夏の話

世界のお茶——そして、帰ってくる

カモミール、ルイボス、パウダルコ、スリッパリーエルム、柿の葉茶。このブログでは、世界各地のハーブティーや薬草茶も紹介しています。

それぞれに個性があって、体への働きも異なります。興味のある方はのぞいてみてください。

世界のお茶棚から——カモミールからパウダルコまで

急須を、出してみませんか

お茶は特別な飲み物ではありません。急須に茶葉を入れて、湯を注ぐ。ただそれだけのことです。

でも、その一杯には長い時間が詰まっています。茶畑を案内してくれた農家の方、火入れとブレンドに向き合う職人、食後に黙って急須を持ち出した祖母。そういう人たちの連なりの、末端にいまの自分がいる。

しまいこんだ急須があるなら、きょう久しぶりに出してみてください(笑)