「授乳中の食事で気をつけることを教えてください」——食卓アドバイザーはやまに相談してみたら

授乳中の食事

「授乳中の食事で気をつけることを教えてください。何を食べればいいのか、何を避けるべきなのか、調べれば調べるほどわからなくなってきました」

こんな相談をいただきました。産後2ヶ月の、30代のママさんです。

産後のからだは、想像以上に消耗しています。出産というとてつもない仕事を終えたばかりなのに、今度は赤ちゃんを育てるためにおっぱいを出し続けなければならない。眠れない夜が続くなかで、食事まで完璧にしなければと追い詰められているお母さんが、少なくありません。

ひとつだけ、お伝えしたいことがあります。授乳中の食事も、特別なことをする必要はありません。

はやま

妻が娘に授乳していたころ、キッチンに立つのもしんどそうにしていた時期がありました。そのころ、いまの知識があったらと思うことがあります。

3つだけ、覚えておいてください

① 水分——母乳の大半は、水でできている

母乳の成分のほとんどは水分です。授乳中はこまめに補給しないと、からだの水分が一方的に出ていってしまいます。喉が渇いたと感じる前に、授乳のたびにコップ一杯飲む習慣をつけるといいといわれています。

白湯、麦茶、ほうじ茶など、からだを冷やさない温かい飲み物がおすすめです。

はやま

実は甘酒は、江戸時代から産後の女性に飲まれてきた飲み物です。消化がよく、自然な糖質とビタミン類を含んでいるため、エネルギーと水分を同時に補えるすぐれもの。「飲む点滴」と呼ばれてきたのには理由があります。

② 栄養——産後のからだと、赤ちゃんの両方のために

授乳中は通常よりも多くのエネルギーと栄養素が必要とされています。赤ちゃんに栄養を届けながら、産後のからだも回復させる——。それを同時にやっているのですから、当然です。

とくに意識してほしい栄養素が2つあります。

鉄分——出産時の出血で消耗した鉄分を、少しずつ取り戻す必要があります。妊娠中と同様、赤身の肉や魚、ほうれん草などを意識的に摂るようにしてください。

カルシウム——母乳にはカルシウムが含まれています。摂取量が不足すると、ママ自身の骨から補われるといわれています。小魚、乳製品、豆腐や納豆などの大豆食品を日々の食事に取り入れると安心です。

そしてもうひとつ、腸内環境も忘れずに。授乳中にお母さんが乳酸菌を摂ると、母乳を通じて赤ちゃんの腸内環境にもよい影響がある可能性があるといわれています。

はやま

娘が乳児湿疹で悩んでいたとき、妻は授乳中に毎日ヨーグルトを食べるようにしていました。湿疹が落ち着いていったのは、ちょうどそのころと重なります。「お母さんの腸を整えることが、赤ちゃんの腸を整えることにもつながるかもしれない」——この考え方については、こちらの記事でくわしく書いています。

③ お酒とカフェイン——控えましょう

授乳中のお酒は、控えることが推奨されています。アルコールは母乳中に移行するといわれており、赤ちゃんのからだへの影響が懸念されています。

カフェインについては、過剰摂取は控えることが推奨されています。コーヒーや緑茶を一日に何杯も飲むのでなければ、神経質になりすぎなくてもよいという考え方もありますが、心配な方はかかりつけの医師や助産師に確認してみてください。

ひとつ、俗説を成敗します

「脂っこいものを食べると、乳腺炎になる」

授乳中のお母さんに長く信じられてきた話ですが、食事と乳腺炎の関係については科学的な根拠が薄いといわれています。乳腺炎の主な原因は授乳の頻度や姿勢、乳管の詰まりなどとされており、食べたものが直接の原因になるとは考えにくいようです。

脂っこいものを避けすぎてカロリーが不足するより、バランスよく食べることのほうが、からだにはずっと大切です。

はやま

「天ぷらを食べた日に乳腺炎になった」という話は昔からよく聞きます。でも、天ぷらを食べた日に乳腺炎になっただけで、天ぷらが原因とは限らない。「同じ日に起きた」と「原因と結果」は、別の話。気にしすぎてストレスを感じるほうが、からだには堪えると思います。

授乳期間は、意外と短い

あとから振り返ると、授乳期間はほんの一瞬です。でも只中にいると、永遠に続くような気がしてしまう。

食事を整えることは、赤ちゃんへの愛情表現のひとつです。水をこまめに飲んで、バランスよく食べて、できれば発酵食品をひとつ食卓にならべる。それだけで十分なスタートです。

自分のからだを大切にすることが、赤ちゃんを大切にすることにつながっています。


【注記】この記事は食生活アドバイザーの立場から執筆しています。授乳中の栄養摂取に関するガイドラインは更新されている場合があります。最新の情報はかかりつけの医師・助産師にご確認ください。本記事は医療的な診断・治療を目的としたものではありません。