赤ちゃんを産んだ後、こんなことを感じたことはありませんか。
さっき何をしようとしていたか忘れた。話の途中で言葉が出てこない。なんでもないことで涙が出る。頭に靄がかかったみたいにぼんやりする——。
「わたし、おかしくなったのかな」と思った方もいるはず。でも、それは違います。あなたの脳も体も、産後に起きる嵐のような変化に必死で対応しているだけです。
これには名前があります。マミーブレインと呼ばれる状態です。
マミーブレインとは何か
妊娠中、女性のホルモンは劇的に変化します。エストロゲンとプロゲステロンが妊娠前の100倍以上にまで上昇し、出産と同時にガクッと落ちる。このホルモンの急落が、情緒の不安定さや思考力の低下に直結します。
さらにそこへ、睡眠不足が重なります。まとまった睡眠が取れない状態が続くだけで、記憶力・判断力・感情の制御はすべて低下する。これは誰でも同じです。意志の強さや性格とは無関係です。
加えて、産後の体は栄養が大幅に不足しています。妊娠・出産・授乳を通じて、鉄・亜鉛・DHAといった神経や脳の機能に欠かせない栄養素が大量に消費されます。にもかかわらず、赤ちゃんのお世話に追われて自分の食事が後回しになりやすい。
ホルモンの急落、睡眠不足、栄養不足——この三つが重なったとき、頭がぼんやりするのはむしろ当然のことです。
はやま
人の気分は、腸内細菌の気分
ここからが「おかえり!」らしい話です。
気分や感情のコントロールに深く関わる神経伝達物質・セロトニン。その約90%は、脳ではなく腸で作られています。
つまり、腸内環境が乱れるとセロトニンの産生も乱れ、気持ちが不安定になりやすい。「なんとなく気分が重い」状態の背後に、腸の疲れがある可能性は十分あります。
産後は腸にとっても負担の大きい時期です。睡眠不足はそのまま腸のリズムを乱し、食事が乱れれば腸内細菌のバランスも崩れる。するとセロトニンが作りにくくなり、気持ちが揺れやすくなる——。こんな悪循環が起きやすい。
逆に言えば、腸を整えることが、心を整えることに直結します。
うちの妻が安定していた理由
わたしの妻は、娘が生まれてから1か月間、実家でお世話になりました。その後自宅に戻ってきましたが、産後に情緒が不安定になった様子はほとんどありませんでした。むしろ仕事のストレスがなくなって、ふだんより穏やかだったくらいです(笑)
あれはなぜだったのか、いまになって振り返ると、いくつか思い当たることがあります。
まず、実家での1か月。母親のサポートのもと、しっかり食べてしっかり眠れた時間があった。孤立しなかったことは大きかったと思います。
そして自宅に戻ってからも、わたしが食卓を担っていたこと。発酵食品を毎日出す、出汁から作った味噌汁を出す、青魚を週に何度か食べる——という習慣がすでにあった。意識してやっていたわけではなく、それがうちの通常運転だっただけなのですが、結果的に腸内環境を整える食卓が続いていた。
もちろん、これだけが理由だとは言い切れません。でも無関係ではなかったと、わたしは思います。
食卓でできること
「食事を整える」と聞くと、体力も気力も削られている産後に「そんな余裕ない」と感じるかもしれません。だから難しいことは何もしなくていい。
鉄:まず小松菜とあさり
産後に最も消耗する栄養素のひとつが鉄です。鉄が不足すると、疲労感・ぼんやり感・気力の低下が起きやすくなります。小松菜、あさり、納豆、ひじき——。特別なサプリでなくても、毎日の食卓に意識的に取り入れることで補えます。小松菜と豆腐の味噌汁は手間も少なく、鉄とたんぱく質を一緒に摂れる優秀な一杯です。
DHA:週2回、青魚を
DHAは脳の神経細胞の主要な構成成分です。妊娠・授乳期を通じて大量に赤ちゃんへ渡るため、産後のママの体はDHAが不足しやすい状態にあります。イワシ、サバ、アジ、ブリ——。青魚を週に2〜3回食べることを習慣にするだけで、脳の回復をサポートできます。手間をかけたくない日はサバ缶かイワシ缶で十分です。
腸活:発酵食品をひとつだけ
前述のとおり、腸内環境はセロトニンの産生に直結します。本物の味噌で作った味噌汁、納豆、ぬか漬け——どれかひとつを毎日の食卓に置くことから始めてください。全部やろうとしなくていい。今日の一杯の味噌汁が、腸内細菌の機嫌を少しずつ整えていきます。
眠れない夜のセルフケアについてはこちらの記事も参考になります。「頭寒足熱」という古くて正しい知恵の話です。
今夜、一杯だけ
赤ちゃんが眠った後の、静かな台所。
今夜は自分のために、お湯を一杯沸かしてみてください。
そして梅しょう番茶を。番茶に梅干しをひとつ、すりおろし生姜少々、しょうゆを数滴。このブログをよく読んでくださっている方は「またこれか」と思うでしょうけれど(笑)、産後の疲れ切った体には、これが一番よく届くとわたしは思う。
梅のクエン酸が疲弊した腸を静かに整え、生姜が冷えた体の芯を温め、塩気が消耗したミネラルをじんわりと補ってくれる。この一杯が、今夜のあなたには十分な「食卓のケア」です。
はやま
※このブログの情報は、医療機関の監修を受けておらず、病気の診断、治療、予防を目的とするものではありません。記事内でご紹介している効果効能についても栄養素や成分に関するものであり、商品やサービスに関するものではないことにご注意ください。体調不良が長く続く場合は、医療機関で相談することも大切です。食卓でできること、専門家の力を借りること、その両方が、あなたの体を支えます。

