体の中から火が灯る——梅しょう番茶という、古くて新しいセルフケア

梅しょう番茶

「ちょっと風邪っぽいかも」と感じた夜、薬箱を開ける前に試してほしいものがあります。

梅しょう番茶。

番茶に、梅干し一個。生姜のすりおろし少々。醤油をほんの数滴。

たったそれだけです。

でも、これが効く。体の奥からじわっと温まる感覚は、ホットコーヒーでもショウガ湯でもない、独特のものがあります。

初めて飲んだ夜のこと

もう十年以上前の話です。取材で訪ねた有機農家のお母さんが、どこかくたびれた顔をしていたわたしに黙ってこれを出してくれました。

「風邪っぽいんでしょ。飲んで」

梅干しをマグカップの底でぐりぐりとつぶして、番茶を注いで、醤油を少し垂らして、生姜。それだけです。五分もかからない。

ひと口飲んだとき、正直「おいしい」という感じではありませんでした。酸っぱくて、しょっぱくて、ちょっと渋い。でも飲み終えたあと、体の芯がじんわりと温かくなった。あの感覚は今でも覚えています。

「これ、なんですか」と聞いたら、「梅しょう番茶。昔からあるやつよ」と笑っていました。

三つの素材が、ちょうどいいバランスで働く

梅しょう番茶の材料は三つだけです。それぞれに役割があります。

番茶(ほうじ茶ではありません)

ここ、大事なポイントです。ほうじ茶ではなく、番茶を使います。

番茶は緑茶の一種で、硬くなった葉や茎を使った、カフェインが少なめのお茶。アルカリ性で胃腸にやさしく、体を温める作用があります。ほうじ茶もおいしいですが、梅しょう番茶の場合は番茶の渋みと相性がいい。

梅干し

日本が誇る発酵食品の雄です。梅干しの記事で詳しく書きましたが、クエン酸をはじめとする有機酸が豊富で、疲労回復との関係で昔から親しまれてきました。体を内側からほぐすイメージです。必ず添加物なしの昔ながらの梅干しを選んでください。

生姜と醤油

生姜は体を温める食材の代表格。すりおろしたてが理想ですが、チューブの生姜でも十分です。発酵調味料の醤油はほんの数滴で、全体の味をぐっとまとめてくれます。多すぎると塩辛くなるので、2〜3滴でじゅうぶんです。

作り方

むずかしいことはひとつもありません。

  1. マグカップに梅干し一個を入れ、スプーンの背でしっかりつぶす
  2. 熱めの番茶を注ぐ(150〜180ml程度)
  3. 生姜のすりおろしを小さじ1/4ほど加える
  4. 醤油を2〜3滴垂らして、軽く混ぜる

以上です。所要時間、三分。

はやま

梅干しはしっかりつぶすのがコツです。底に転がしたまま飲んでも、味がぼんやりしてしまいます。スプーンでぐりぐりとペースト状になるくらいまでつぶすと、ぐっとおいしくなります。

いつ飲むか

特別な飲み物ではなく、日常のひとこまに置いてほしいと思っています。

わたしがよく飲むのは、なんとなく体がだるい朝、冷えが気になる夜、そして季節の変わり目に「あ、ちょっとヤバいかも」と感じたとき。そのタイミングで一杯飲むと、体が「あ、ちゃんと気にかけてもらえてる」と感じるような、そんな感覚があります。

気休めかもしれません。でも、気休めはとても大切です。

薬箱を開ける前に、まず台所へ。日本には、そんな知恵が昔からありました。