「夫の転職で収入が減った。食費を削りたいが、質は落としたくない」——食卓アドバイザーはやまに相談してみたら

家族の食卓

40代の主婦です。夫が転職し、収入が以前より減りました。小学生と中学生の子どもがいるため、これまで通りの食費を維持するのが難しくなっています。

安い食材ばかりに頼ると、栄養が偏ったり、添加物まみれの加工食品に頼ることになるのではと不安です。かといって、これまで通りの買い物をしていたら家計が破綻してしまいます。

食費を削りながらも、家族の健康を守り、食卓の質を落とさずにすむ方法があれば教えてください。

(40代の主婦・Fさん)

Fさんの不安はとてもよくわかります。収入が減るというのは、ただ家計簿の数字が変わるだけではありません。家族の食卓という、いちばん大切な場所にまで影を落とす。

質を落としたくない、その言葉の奥には、家族を思う気持ちがあります。

ただ、食費を削ることは、質を落とすことと同じではない。むしろ、制約があるからこそ見えてくる豊かさもあるとわたしは思いますよ。

安い=悪い、という思い込み

わたしたちはいつからか、高い食材が良いもの、安い食材は悪いもの——そんな図式に縛られてしまっています。でも、台所をよく見てみると——。

味噌、醤油、漬け物。旬の野菜、乾物、豆。それから米と塩と水。これらは、あなたのおばあさんの時代、そのまた前の時代も家族を支えてきた、本物の食材です。高級ではないし、派手でもない。でも、力強い。

発酵食品は、家計の味方であり、家族の味方

味噌汁を思い浮かべてください。

味噌、昆布、豆腐、わかめ、ねぎ。材料費は100円もかからない。でも体を温め、腸を整え、心まで落ち着かせてくれる。高級料理や高いサプリメントより、毎朝の味噌汁のほうがよっぽど家族の体を守る力になってくれます。

醤油もそうです。いい醤油を一本置いておくだけで、豆腐も卵かけご飯も野菜炒めもごちそうに変わります。

ぬか漬け、ぬか床を用意すれば、毎日手軽に食べられます。立派なおかずですし、発酵食品です。体にも財布にもやさしい。

旬の野菜と乾物と豆——安くて強い日本の知恵

旬の野菜は、安いだけではありません。

冬の大根や白菜。春の新玉ねぎや菜の花。夏のトマトやきゅうり。秋のさつまいもや里芋。こうしたものが安いのは、旬だからです。しかもその季節に体が求めている栄養がぎっしり詰まっている。

乾物にも目を向けてみてください。切り干し大根、ひじき、高野豆腐。少量でも栄養が凝縮されています。保存もきく。

豆腐、納豆、油揚げ——どれも安い、体が喜ぶ、飽きない。

家計にやさしいものと、体に必要なものが、これほど一致している国はめずらしい。

高い食材ではなく、良い調味料に投資する

ひとつ提案があります。食材ではなく、調味料にお金をかける。良い味噌、良い醤油、良い塩、良い油。一度買えば何か月も持ちます。

調味料は、長持ちする投資です。わたしもそう考えて、思い切っていいものを買うようにしています。安価な調味料で高い食材を調理しても、味は平板になります。シンプルな素材に良い調味料、これが正解。

品数を減らすと、見えてくるもの

収入が減って食費を切り詰めるとき、大抵の人は「家族にひもじい思いをさせてしまう」と肩を落とします。でも、わたしの考えはむしろ逆です。

献立を思い切ってシンプルにすると、食卓は痩せません。ご飯と味噌汁、漬け物。焼き魚か豆腐。旬の野菜を少し。これだけで、食事の形はきちんと整います。それどころか品数を追いかけていた頃より、ひとつひとつの素材の味がはっきり立ってくる。

今日は何を作ろうと頭を抱える時間もぐっと減ります。安売り品を探してスーパーをさまよう必要もない。台所そのものが、軽くなるのです。

削ったのは、食費と余計な品数と献立に悩む時間。家族の健康でも、食卓の楽しさでもありません。

不安を手放し、変化を受け入れる

Fさんの不安はとても自然なものです。でも、その不安の正体は、質が落ちることではなく、変化への恐れかもしれません。

高級な食材がなくても、子どもは育ちます。加工食品に頼らなくても、おいしい食卓は作れます。

むしろシンプルな食卓のほうが、家族の心と体を守ってくれることがある。

味噌、醤油、塩。旬の野菜、乾物、豆。米と水。何百年も日本の家族を支えてきた豊かな食材です。

その豊かさを一度、信じてみてください。