僕は大学で哲学を専攻していて、こちらの哲学の記事をよく読ませてもらっています。実はいま、母のことでちょっと悩んでいます。
最近、生まれて初めて恋人ができたんですが、母がその子に冷たいんです。連れて帰ってもお茶も出してくれない。母は生真面目な人で、父ともお見合い結婚で、たぶん恋愛経験とかないと思います。
だからかなと思いますが、このあいだは「学生の本分は勉強。女の子にうつつを抜かしてて大丈夫なの?」と言われました。無言で別れなさい、と言ってる気がします。
僕は真剣に交際しているつもりです。卒業したら結婚したいと考えています。でもその子はあのお母さんとうまくやれる自信がないと言い出してて、もうどうすればいいのか……。
いったん別れたほうがいいのでしょうか。恋愛には母が言うように確かに時間をとられますし。
(22才学生、Kさん)
学生さんから質問いただくのは、初めてです。快挙です(笑)
笑っている場合ではありませんね。真剣なお悩み相談です。
わたしも真剣にお返事します。
はやま
わたしの母の話
相談文を読んでいて、実は胸の奥が少しざわつきました。というのも、わたし自身、母との関係で似た経験があったからです。
かなり恥ずかしいのですが、最初にわたしのことをちょっとお話しします。
学生時代、交際相手を実家に連れて帰ったら、母がやけにそっけない。ある日などは「お母さんは買い物に出るから、家から出て行きなさい」という。理由を聞くと、年ごろの男女を二人きりにするわけにはいかないという。そんなことが重なって、新しい恋人ができても母に紹介することはなくなりました。
ある日、食事中に母が突然いいました。「あの娘と結婚するつもり?」「そのうち東京に行くつもりだし、どうかな」とわたし。すると「それは別れないかん。女の子はあんたのおもちゃと違うんやで」。驚きました。でも息子に対するやきもちかなと思っていました。
それから数年後――。
上京が決まって、それまで住んでいた部屋を引き払い、実家に戻っていたころのことです。
東京で落ち着いたら、交際相手を呼んでいっしょに暮らそうかななんてぼんやり考えていたから、そのことを軽く話したのです。すると母が突然、強い口調でこういった。「あんた、それはあかん。夢と女の子を両方、手に入れようなんて、ずるい」。
その「ずるい」を聞いて、母の心の奥底にあるものが見えた気がしました。
嫉妬。
それは、わたしに対してでなく「恋愛」しているすべての人に対して。
母は田舎で育ち、年ごろになるとお見合い。父と一緒になりました。外で働いた経験もなければ、恋愛の経験もない。たぶん恋愛に対して強烈な憧憬があったんじゃないかな。ちょっと気の毒になりました。
でも経験者はみんな知っています。恋愛には強い力があることを——。
シェイクスピアは「恋は盲目」といいました。恋をすると人は何事に対しても積極的になる、自分に自信が持てるようになる、底なしのエネルギーが湧いてくる。
ここで、恋愛の力について少しだけ視野を広げてみましょう。
恋愛の力については、昔の哲学者や詩人たちも同じことをいっています。
偉人たちの恋愛感
Kさんは哲学を専攻しているとのことですので、プラトンはよくご存じですね。
古代ギリシアの哲学者プラトンは著書『パイドロス』で、「恋の狂気は、神々が人間に与える最大の恵みである」 と書いています。彼は恋を「狂気」と呼びながら、人に日常の限界を超えさせる「神的エネルギー」として捉えていました。
恋をすると人が大胆になったり、創造性が爆発したりするのは、プラトン的には「神のギフト」。
オーストリアの詩人リルケは「愛は、私たちを大きくし、強くするためにある」「愛するということは、互いに守り合うことではなく、互いを成長させることだ」といっています。
恋は人を強くする、成長させる、より深く生きられるようになる、というのが彼の思想。
さきほどのシェイクスピアの「恋は盲目」は有名すぎる言葉ですね。シェイクスピアは恋を「理性を超える力」として描き続けました。盲目になるほどの力で、人を突き動かし、恐れを忘れさせ、行動させるエネルギーを与える、と。
ピカソはこういった。「愛は人生で最もすばらしい活力である」。ピカソは恋愛から創作のエネルギーを得ていたことで有名です。恋をすると、人は「創造力」というかたちで強くなると考えていた。
最後にもう一度、プラトンの言葉を。
「愛に触れると誰でも詩人になる」。恋愛をすると感受性が高まって、表現力が豊かになる。いちばんピュアで強い創造力の源泉だと。
このあたりでやめておきますが(笑)、古今東西さまざまな小説や詩、芸術、音楽が恋愛をテーマにしてきたのも同じ理由からでしょう。当時わたしは作家を志していました。だからむしろ、たくさん恋愛をしておいたほうがいいと思っていました。
恋愛の力は科学的にも証明されている
昔の人たちが感覚的に知っていた「恋愛の力」は、最近になって科学的にも裏づけられているようです。
ラトガーズ大学の人類学者ヘレン・フィッシャー博士らの報告では、恋をしているとやる気、モチベーションにかかわる脳領域が活性化するそうです。ほかにもそういった研究はいろいろある。
恋愛にはやっぱり強力な力があったのです。そしてその力は、いままさにKさんのなかで働いている。
だからKさん、いまの恋を大切にしてください。
お母さんは時間をかけて変わります。うちの母もそうでした。いまの妻を紹介したときは、喜んで迎えてくれました。まだ、心の準備が整っていないだけだと思います。
交際相手の女性も、あなたのお母さんの「敵」ではありません。まだどう接していいかわからないだけです。
別れる必要なんてありません。ただ、急がないこと。お母さんを説得しようとしないこと。交際相手の女性にお母さんを好きになってもらおうとしないこと。いまはただ、あなた自身がしっかり立っていればいい。その姿が、時間をかけてふたりの距離を縮めます。
恋の力は、いまのあなたを確実に強くしている。その力を信じてください。
はやま
Viewing Pictures of a Romantic Partner Reduces Experimental Pain: Involvement of Neural Reward Systems
Jarred Younger, Arthur Aron, Sara Parke, Neil Chatterjee, Sean Mackey
Intense, Passionate, Romantic Love: A Natural Addiction? How the Fields That Investigate Romance and Substance Abuse Can Inform Each Other
Helen E Fisher, Xiaomeng Xu, Arthur Aron , Lucy L Brown
Love-related changes in the brain: a resting-state functional magnetic resonance imaging study
Hongwen Song, Zhiling Zou, Juan Kou, Yang Liu, Lizhuang Yang, Anna Zilverstand, Federico d’Oleire Uquillas, Xiaochu Zhang
Cognition, emotion and reward networks associated with sex differences for romantic appraisals
Jie Yin, Zhiling Zou, Hongwen Song, Zhuo Zhang, Bo Yang, Xiting Huang
※このブログの情報は、医療機関の監修を受けておらず、病気の診断、治療、予防を目的とするものではありません。記事内でご紹介している効果効能についても栄養素や成分に関するものであり、商品やサービスに関するものではないことにご注意ください。体調不良が長く続く場合は、医療機関で相談することも大切です。食卓でできること、専門家の力を借りること、その両方が、あなたの体を支えます。

