冷蔵庫を開けると、バターが入っています。シチューをつくるときはドバっと入れます。お肉の脂身も大好きで、残すということをしません。
「え、それって太らないんですか」とよく聞かれます。
太りません。少なくとも、油のせいでは太らない。肥満の本体はほぼ糖質です——という話から、今日は始めます。
「油を食べると太る」は本当か
長いあいだ、脂肪は悪者でした。カロリーが高い、コレステロールを増やす、動脈硬化の原因になる。そういうイメージが根強く残っています。
でも近年、栄養学の見方は変わっています。体脂肪として蓄積されやすいのは脂肪よりも糖質です。糖質を摂ると血糖値が上がり、インスリンが分泌されます。このインスリンが余分な糖をせっせと脂肪に変えて体内に蓄える——。これが肥満の主なメカニズムです。
油はむしろ、腹持ちがよく食欲を落ち着かせる働きがあります。良質な油をしっかり摂ることは、過食の予防にもつながります。
はやま
油の基本——飽和と不飽和、一行で
油の話になると「飽和脂肪酸」「不飽和脂肪酸」という言葉が出てきます。難しそうですが、一行で言えばこうです。
飽和脂肪酸——常温で固体。バター、ラード、ヘット(牛脂)、ココナッツオイルなど。動物性脂肪に多い。
不飽和脂肪酸——常温で液体。オリーブオイル、えごま油、サラダ油など。植物性の油に多い。
かつては「飽和脂肪酸=悪、不飽和脂肪酸=善」という図式が信じられていました。でも今はその単純な二項対立が崩れています。問題は飽和か不飽和かではなく、何の油をどれだけ摂るかです。
オメガ3とオメガ6——ここが本当の核心
不飽和脂肪酸の中で特に重要なのが、オメガ3系とオメガ6系です。どちらも体内で合成できないため、食べ物から摂る必要があります。そして、この2つのバランスが現代人の健康を大きく左右しています。
理想の比率はオメガ3:オメガ6=1:4とされています。ところが現代人の食事では、このバランスが完全に崩れています。1対10、ひどい場合は1対20という人も少なくない。オメガ3が圧倒的に不足しているのです。
なぜ問題かというと、それぞれにこんな働きがあるからです。
オメガ6系(リノール酸など)
- 体内の炎症を促進する
- アレルギーを起こす物質の合成を増やす
- 過剰摂取すると血液がドロドロになりやすい
- 代表的な油:サラダ油、コーン油、大豆油、ひまわり油、紅花油
オメガ3系(アルファリノレン酸・DHA・EPAなど)
- 体内の炎症を抑制する
- 花粉症などアレルギーを鎮める働きがある
- 血液をサラサラにする効果がある
- 代表的な油:えごま油、しそ油、亜麻仁油、青魚(DHA・EPA)
スーパーの棚に並ぶ手頃な植物油のほとんどはオメガ6系です。飲食店の料理や加工食品に使われる安価な油も同じです。知らず知らずのうちにオメガ6を大量に摂り、オメガ3が極端に不足している——これが現代人の標準的な状態です。
日本でアレルギー疾患を持つ人が増え続けているのは、この油のアンバランスが一因だという専門家もいます。
はやま
トランス脂肪酸——これだけは知っておいてほしい
油の話で一番伝えたいのが、トランス脂肪酸のことです。とくに小さな子どもを持つ親御さんに。
トランス脂肪酸は、植物油に水素を添加して人工的に固体にしたものです。マーガリンやショートニングがその代表。製造コストが安く、食感がよく、日持ちがする。だからパン、クッキー、ケーキ、カップ麺、インスタント食品——。ありとあらゆる加工食品に使われています。
ところがこのトランス脂肪酸、体内に入ると細胞膜の材料になってしまいます。人体は37兆個の細胞でできていて、細胞膜は栄養や酸素を取り込み、老廃物を排出する大切な仕組みです。その材料がトランス脂肪酸だと、細胞膜がもろくなる。正常に機能しないビタミンやホルモンがつくられる。
成長期の子どもは新陳代謝が活発で、細胞の入れ替わりが速い。だからこそ、口に入れるものの影響がダイレクトに出やすい。アトピーや食物アレルギーを持つお子さんがいるご家庭では、とくに意識してほしいのです。
海外ではすでに規制が進んでいます。ニューヨーク市が2007年に飲食店での使用を全面禁止したのを皮切りに、アメリカでは2018年に国レベルで事実上禁止になりました。多くの国で含有量の表示が義務づけられています。日本の規制はまだ緩いですが、それは安全だということではありません。
食品の原材料表示を見るとき、こんな表記があればトランス脂肪酸が含まれています。
マーガリン/ショートニング/植物油脂/ファットスプレッド/水素化油脂/食用精製加工油脂
「植物油脂」は聞こえがいいですが、注意が必要です。
はやま
葉山家の油棚
理屈より実践の話の方が伝わりやすいと思うので、わが家の油棚を公開します。
こめ油(メインの炒め物用)
国産米ぬかから採れる油。癖がなく、どんな料理にも使いやすい。酸化しにくく、揚げ物にも向いています。わが家の台所の主役です。
オリーブオイル(炒め・ドレッシング)
オレイン酸(オメガ9系)が豊富で、熱にも比較的強い。風味がよく、料理の仕上げにかけるだけで食卓が華やぎます。エキストラバージンを選んでいます。
ごま油
中華風の味つけに不可欠。炒め物やスープにすこし垂らすだけで、香ばしいかおりが立ちます。ごま油のみだと食味が重くなるので、こめ油との併用が多い。
えごま油(生食専用)
オメガ3系のアルファリノレン酸が豊富。ただし熱に弱く、加熱すると酸化するので必ず生で使います。サラダにかける、納豆に混ぜる、野菜ジュースに少し入れる——。どれもおいしい。えごま油のクリーミーな甘さは一度試してほしいです。
ココナッツオイル(たまに)
飽和脂肪酸が豊富で酸化しにくく、独特の甘い香りがあります。詳しくは別の記事に書きました。
キャノーラ油(揚げ物のとき)
正直に言うと、オメガ6系が多い油です。でも揚げ物にはコスパよく惜しげなく使えるものがほしい。頻度が少ないので許容範囲と割り切っています。
バター(毎日)
冷蔵庫に常備。シチューにもパンにも使います。飽和脂肪酸が多いですが、前述の通り気にしていません。小腹が空いたとき、そのままかじることも。
はやま
結局、何を選べばいいか
難しく考える必要はありません。シンプルにまとめると、こうなります。
- 積極的に摂りたい——えごま油・亜麻仁油(生食で)、青魚(DHA・EPA)、オリーブオイル、こめ油、バター
- ほどほどに——サラダ油・大豆油・コーン油などオメガ6系の多い油(揚げ物のときだけ、など)
- できれば避けたい——マーガリン・ショートニング(トランス脂肪酸)
特別なことは何もありません。原材料表示を一度だけ確認する習慣をつけるだけで、家族の体に入るものがずいぶん変わります。
油は毎日使うものです。そして細胞膜の材料になるものです。調味料やお酢と同じように、少しだけ知識を持って選んでほしいと思っています。
※このブログの情報は、医療機関の監修を受けておらず、病気の診断、治療、予防を目的とするものではありません。記事内でご紹介している効果効能についても栄養素や成分に関するものであり、商品やサービスに関するものではないことにご注意ください。体調不良が長く続く場合は、医療機関で相談することも大切です。食卓でできること、専門家の力を借りること、その両方が、あなたの体を支えます。

