パパの離乳食はちゃんと食べる。——気まぐれな赤ん坊と、ちょっと誇らしい父の話

赤ちゃんと両親

妻が時間をかけてこしらえた離乳食を、娘はぷいと拒否しました。

まとめて作って、小分けにして、冷凍して、毎食解凍しては温度を確認して出す。そのひと手間の積み重ねがどれほど大変だったか、当時のわたしはよくわかっていませんでした。

スプーンを差し出す妻に、娘は口をへの字に結んでそっぽを向く。

「ちょっと、代わって」

おそるおそるスプーンを受けとりました。同じお椀、同じおかゆ、同じスプーン。でも、差し出したのがわたしになったとたん——娘はぱっと顔を輝かせ、ぱくり。 もぐもぐ、もぐもぐと咀嚼している。

妻は愚痴をいいました。当たり前です。

でも、わたしはちょっと誇らしかった。そして、そのあと何度も同じことが起きるたび、妻の顔は少しずつ曇っていきました。

なぜパパの離乳食だけ食べたのか

なぜ食べてくれたのか。わかりません。

娘はわたしと瓜二つ。 何か通じ合うものがあったのかもしれないし、 ただの気まぐれだったのかもしれない。

赤ん坊の判断基準は、もはや量子力学です。昨日食べたものを今日は拒むし、お父さんだと食べないのに、お母さんだと食べる。うちは逆。

きょうだいでも違います。決まったパターンなんて、どこにもありません。

離乳食のこと、ちょっと真面目に

せっかくなので、食卓アドバイザーとして少しだけ実用的な話も。

離乳食はだいたい生後5〜6ヶ月ごろから始めます。いきなりステーキは無理ですが、なめらかなおかゆならいける。

離乳食は、月齢に合わせて食感を変えていきます。

時期月齢のめやす食感のめやす
離乳初期5〜6か月頃なめらかにすりつぶした状態
離乳中期7〜8か月頃舌でつぶせる固さ
離乳後期9〜11か月頃歯ぐきでつぶせる固さ
離乳完了期12〜18か月頃歯ぐきで噛める固さ

この時期、とくに意識したいのが鉄分です。

赤ちゃんは生まれたときに「鉄の貯金」を持っています。でも生後6〜8か月ごろに底をつきます。わたしの貯金と同じ(笑)

赤身の肉や魚など、動物性食品から摂れるヘム鉄は吸収されやすくおすすめです。

卵アレルギーについては近年、考え方が変わっています。 以前は遅らせて与えるのが主流でしたが、 国内の研究では生後6か月ごろから少量の加熱全卵を摂取すると発症リスクが下がるとされている。ただし湿疹がある場合は、かならず小児科医に相談を。

そして、これだけは例外がありません。1歳未満にはちみつは絶対にNG。加熱にも負けないボツリヌス菌が含まれる可能性があるからです。パンや飲料に入っているケースもあるので、原材料表示の確認を。

手作りじゃない日があっていい

妻は全部手作りで、冷凍ストックをこまめに作っていました。本当にすごいことだと、いまになって思います。

でも、市販のベビーフードを使うことに後ろめたさを感じる必要はありません。

鉄分補給に欠かせないレバーは家庭では調理が大変ですし、 月齢に合った「固さの見本」としても使える。疲れた日に笑顔でいるための道具として、うまく頼るのがベターです。

食べてくれない日があってもかまわないのです。「自分の作ったものを食べてくれない」と悩むお母さんお父さんがいるなら、ひとこと。

あなたのせいではありません。そして、そのうち食べるようになります。

うちの子も、あのあとすぐ妻から喜んで食べるようになりました。赤ん坊の気まぐれは風みたいなもの。つかまえようとすると逃げるし、忘れたころにふっと寄ってくる。

それでも、あのときの「ぱくり」は、わたしの宝物です。