「息子が思春期に入って、急に冷たくなった」——食卓アドバイザーはやまに相談してみたら

父と息子と

中学にあがってから、息子がまるで別人になってしまいました。

小学生のころはよく話しかけてきたのに、最近は「ふーん」「別に」「うん」の三語しか返ってこない。週末に「どこか行こうか」と誘っても「いい」と即答されます。リビングでいっしょにいても、それぞれスマホを眺めているだけ。

自分が情けないというか、なにかいけないことをしたのかと、父親としての自信がなくなってきました。

今回ご相談をくださったのは、40代のYさん。中学三年の息子さんとの関係に悩む、ごくふつうのお父さんです。「以前はあんなに仲よかったのに」という言葉が、相談文のあちこちに滲んでいました。

最近こういうご相談をいただくことが増えていますが、わたしは育児カウンセラーではありません。食卓アドバイザーです。自分の子育てについていろいろ書いてきたからかな。まあ、なんでもいいんですが(笑) 

今回は、同じ道を経験してきた父親としてお話ししますね。

読んでいて、胸がぎゅっとなるような相談でした。

まず思ったこと——。

息子さんはきわめて正常です。

はやま

うちも通りましたよ、同じ道。娘が中学二年生になったころから、「パパ」という呼びかけが「ねえ」に変わっていました。最初は気のせいかと思っていましたが、ある日はっきり気づいて、ひとりでひっそり傷ついていました(笑)。「一郎さん」と呼ばれたこともあった。でも、いま振りかえると、あれは成長のサインだったのだと思います。

「冷たさ」の正体

思春期に起きていることを、いったん静かに見つめてみます。

中学生になると、子どもは「自分とはいったい何者か」という問いに、真剣に向き合い始めます。心理学者のエリクソンがこれを「アイデンティティの形成」と呼んでいます。ようするに自分の輪郭をたしかめるために、子どもはまず親から距離を置こうとする。

反抗でも拒絶でもなく、成長のあかしです。

親から分離することで、「自分」が生まれる。だから「ふーん」も「別に」も、息子さんが自分を育てている音です。静かですが、たくましい音です。

はやま

そうはいっても、親も人間です。雑に扱われると傷つく。腹が立つこともある。正直いって、それで火花が散ったことも一度や二度ではありません(笑)

パパが傷つく本当の理由

「息子が冷たくなった」と感じるとき、傷ついているのは親としての愛着だけではないかもしれません。「自分はいい父親だったのか」「息子との関係は本物だったのか」——。そういう問いが、じわりと浮かんでくる。

とても人間らしい反応です。でも、息子さんはあなたが嫌いになったわけではない。むしろ、父親との関係が安定しているからこそ、安心して離れていける。不安定な家庭の子どもほど、親からなかなか離れられないという逆説もあるそうです。

冷たくなれるのは、あなたを信頼しているからです。その信頼があるからこそ、息子さんは安心して距離をとれる。

はやま

笑顔で話しかけても、冷たい返事しか返ってこない。それで大人げなく、食ってかかったこともあります。すると屁理屈の応酬を受ける。こちらの理屈は通じません。娘が駆使するのは屁理屈ですから(笑) それで「まったく口ばっかり達者になって、いったい誰に似たんだ」なんてぷんぷんしていたら、妻がわたしを見て、にやにやした。ハッとしました。

ことばのいらない接点

思春期の子どもと「会話をしよう」としてもうまくいかないことが多い。向き合って話すことに、この年代の子どもはプレッシャーを感じやすいのです。それで、かえって心を閉じてしまうこともある。

食卓は横ならびの時間です。向き合わなくていい。話さなくてもいい。ただ、同じものを食べて、同じ空間にいる。それだけで何かが伝わっていきます。

「共食」という言葉があります。家族での食事回数が多い子どもほど、自己肯定感が高く、精神的に安定しているという研究結果が繰り返し報告されています。子どもが何も話さなくても、食卓はそこにある。それでいいと思う。食卓は、言葉より先に家族をつなぐ場所だから。

はやま

実は、わたし自身も思春期のころは、親に対して距離を置いていました。あの年代は、とにかく干渉されたくないんですよね。その感覚を思い出して、娘のときは少し距離をとって見守ることにしました。必要なことだけ話して、あとはそっとしておく。意外だったのは、LINEだとふつうに会話が弾むこと。そんなふうにゆるくつながっているうちに、娘も徐々に落ち着いていきました。

食卓でつながるということ

実践的なことを少しだけ。

思春期の子どもを食卓に呼ぶいちばんの方法は、好きなものを作ることです。理屈でも命令でもなく、においで呼ぶ。揚げ物のにおいは最強です(笑)。来たら来たで、何も聞かない。

食卓でいっしょに食べながら、「今日こういうことがあってさ」と親のほうから話してみるのも手です。子どもは聞いていないふりをしていても、ちゃんと聞いています。

それから、帰宅したときの「おかえり」のひと言。これだけは欠かさないほうがいいと思います。玄関まで迎えに出なくてもいい。奥の部屋から声だけでもいい。それが積み重なって、「自分はここに帰っていい」という安心感が生まれる。思春期の子どもにとって、とても大きなことだと思います。

いつかまた、話しかけてくる

思春期は、いつか終わります。

大学生になるころ、あるいは社会に出るころ、息子さんはまた話しかけてくるでしょう。仕事の話、将来の悩み、ときには恋愛相談まで。そのとき父親としてそこにいるために、いまはそっと食卓に灯りをともしておいてください。

「ふーん」でも「別に」でも、食卓に座ってくれるだけでいい。毎日うちに帰ってきて、食べてくれるだけでいい。それだけで、あなたはもう十分に「父親」をやれている。

息子さんのひと言に傷ついた夜は、熱々の梅しょう番茶を淹れて、好きな音楽を聴きながらゆっくりとすすってみてください。気分が落ち着くし、よく眠れます。わたしは悲しいとき、そうしていました(笑)

はやま

うちの娘、最近また「パパ」と呼んでくれるようになりました(笑)