子どものころから、よく眠る子でした。
休みの日は昼過ぎまで寝ていることもあって、母親にはよくあきれられました。「いつまで寝てるの」「もったいない」——。そんな声を聞きながらも、布団の中で「でも眠いんだから仕方ない」と思っていた記憶があります。罪悪感はあったけれど、体が起きることを拒否していたのです。
大人になってから、ようやくわかりました。あれは正しかった、と。
海の見える駐車場で、先輩と昼寝
新卒で商社の営業職に就いたころの話。外回りの途中、先輩に「いいところに連れて行ってやる」と言われてついて行くと、海の近くの広い道路に車を停めました。見晴らしがよく、人も車もほとんど来ない、静かな場所でした。
「ここ、最高の昼寝スポット」
先輩はそう言って、シートを倒してそのまま眠ってしまいました。わたしも倣って目を閉じると、潮の匂いと遠くの波音の中、あっという間に眠りに落ちてしまいました。
1時間ほど眠って目が覚めると、頭がすっきりしていました。午後の商談が、嘘みたいにうまく運んだことを覚えています。先輩もきっと、昼寝が「必要」な人だったのでしょう。
娘も、よく眠る
血は争えないもので、娘もよく眠ります。週末の予定のない日は、午後1時くらいまで寝ていることもあります。小さなころからそうで、体が疲れたときだけでなく、なんとなく機嫌が悪いときや元気のないときも、長く眠ることがありました。
妻は起こしたり、小言を言ったりすることもありました。僕は何も言いませんでした。言われた口だから(笑) というのもありますが、眠りたいときに眠らせてあげたほうがいい、という確信があったのです。
眠って起きた娘は、いつも顔色がよくなっていました。
体だけでなく、心の疲れも眠りが癒やす
体の疲れだけでなく、心の疲れにも眠りは有効だとわたしは思います。
何か嫌なことがあった日、悩みが頭から離れない日、理由もなく気分が重い日——。そういうとき長く眠ると、目が覚めたときにどこか気持ちが整っていることがあるからです。
眠っているあいだ、脳は感情を処理しています。起きているあいだに受け取った情報や感情を整理し、不要なものを手放す作業が、睡眠中に行われているのです。だから眠ることは、心を「整える」行為でもあると。眠っても取れない疲れの話でも触れましたが、眠りの質と心身の状態は深くつながっています。
「昼寝=さぼり」という思い込み
日本では、昼寝に対するイメージがあまりよくありません。「怠け者」「時間の無駄」「夜眠れなくなる」——そういう言葉をかけられた経験のある人は少なくないはず。
でも考えてみると、多くの動物は昼間も眠ります。スペインをはじめとするヨーロッパや中南米の国々にはシエスタの文化があり、昼の休息を当然のものとして受け入れてきました。午後に眠くなるのは、体内時計の自然なリズムです。眠たくなるのは、体のサインなのです。
だとしたら眠気を無理やり抑えて働き続けることは、体にとっていいことなのでしょうか。
昼寝は心を整え、知能を向上させる
調べてみると、わたしがなんとなくそう思うだけでなく、以下の大規模調査で昼寝のメリットが確認されていました。
【昼寝と子どものメンタル、知能をめぐる研究】
●ペンシルバニア大学・カリフォルニア大学アーバイン校の研究(2019年)
小学4〜6年生約3000人を対象とした追跡調査。昼寝は幸福感、根気、自己制御の向上、行動上の問題の減少、IQの向上、学業成績の向上をもたらした。4年生から週3日以上昼寝をしていた子は、6年生で成績が7.6%向上した。(Sleep誌掲載)
この研究は子どもが対象ですが、脳と体の疲労回復、感情処理という観点で見ると、大人も同じではないでしょうか。
眠りたいときに、眠っていい
昼寝は、さぼりではありません。体と心が必要としているから眠くなる。今日から胸を張って言えます(笑)
週末に子どもが昼過ぎまで眠っていても、どうか怒らないでください。もしかしたらその子は、今週の疲れを丁寧に手放しているのかもしれません。あるいは、心の中で何かを整理しているのかもしれない。
眠りはさぼりではなく、整える行為です。それは子どもも大人も、変わりません。
はやま
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