朝のイライラは、あなたのせいじゃない——食卓アドバイザーはやまに相談してみたら

味噌汁と納豆

「朝、子どもに怒鳴ってしまう。また今日もやってしまったって、胸の奥がズキッと痛むんです。毎日、自己嫌悪で……」

こういう相談を受けることがあります。

そういうお母さんに、最初に言わせてください。

それは、あなたのせいじゃありません。

意志が弱いからでも、ダメなお母さんだからでもない。腸が怒っているだけ。もう少し正確に言うと、朝の腸の状態が、そのままあなたの気分になっている。

今日はそんな話をします。

ずっと昔、僕らはなまこだった

少し変わった話から始めさせてください。

はるか太古の昔、わたしたちの祖先はなまこのような生き物だった——。

どこかでそんな話を聞いたか読んだかしたことがあります。信憑性は保証できませんが(笑)。消化管だけが体のすべてで、食べて、消化して、排泄するだけが仕事だったそうです。

実際、いまでも原始的な生物(ヒドラや扁形動物など)は基本的に消化管が体の中心ですから、ありうる話ではある。

その後、移動するために手足ができ、食べられるものを増やすために胃や消化器が複雑になり、解毒のために肝臓や腎臓が発達し、高度な活動のために肺や心臓が進化した。脳がいまのような形になったのは、もっとずっと後のことです。

つまり人間の体は、腸ありきで設計されているのかもしれない。脳でさえ、腸の後にできた器官だとすれば——。

腸の気分がそのまま脳に伝わるというのは、なんだか腑に落ちる話ではないですか。「腸脳相関」と呼ばれる現象が近年注目されていますが、わたしにはそれが科学的な発見というより、当たり前のことがやっと証明されただけのように思えます。

つまり、人間の体は“腸中心”で進化してきたのかもしれない。

ここからが本題です。 朝の気分が腸に左右されるのは、実はとても自然なことなんです。

はやま

セロトニン(幸福感に関わる神経伝達物質)の約90%は腸で作られています。腸内環境が乱れると、セロトニンの産生も乱れ、気分が不安定になりやすい。「なんとなくイライラする」朝の背後に、腸の疲れがある可能性は十分あります。

朝の腸が、一日の気分を決める

わたし自身の話をします。

便秘気味のとき、あるいは前夜に質の悪い脂で揚げた揚げ物をたくさん食べた翌朝——。自分の反応が変わるのがはっきりわかります。腹を立てるようなことではないのに腹が立つ。気にするようなことではないのに妙に気になる。同じ出来事でも、腸の状態によって受け取り方がまったく違う。

わたしは少し離れたところから自分の心理状態を観察する癖がついているので、そういう感情に完全に飲み込まれることは少ないですが、それでも抑えきれないことはある。そういうときは「ああ、今日は腸が怒っているな」と思うことにしています。

腸が勝手にやっていること。だからあまり気にしない(笑)

朝のイライラも、同じです。睡眠中に腸は一日の疲れをリセットしようとしています。腸内環境が乱れていると、朝起きたときにすでに腸は機嫌が悪い。その機嫌の悪さが、そのままあなたの機嫌になる。

朝、腸が機嫌が悪くなる、三つの理由

① なぜ朝だけイライラするのか——血糖値の落とし穴

夜中の断食状態が続いた朝は、血糖値が下がっています。血糖値が低い状態はそのまま脳のエネルギー不足であり、判断力や感情のコントロールが難しくなります。些細なことで怒鳴ってしまうのは、脳がガス欠を起こしているサインでもあります。

朝一番に白湯をコップ一杯。それから朝食をしっかり食べる——。このシンプルな習慣が、血糖値の急激な低下を防いでくれます。

② イライラを静めるミネラル、マグネシウム

マグネシウムは「ストレス対抗ミネラル」とも呼ばれ、神経の興奮を抑えてイライラを和らげる働きがあります。現代の食生活では不足しやすく、ストレスが多いとさらに消費します。

食事から摂るなら、ひじき、わかめ、納豆、豆腐、ナッツ類。わたしは料理ににがりを少し加えたり、にがりを溶かした湯に浸かることで日常的に補うようにしています。経皮吸収(皮膚から吸収される)も期待できるので、疲れた日の入浴剤として使うのはおすすめです。娘には「今夜はにがり温泉だ」と言っています。「わーい」と返ってきます(笑)

③ 腸が疲れていると、心も疲れる

前述のとおり、腸の状態は朝の気分に直結します。前夜の食事が腸に負担をかけるものだった場合(添加物の多い加工食品、質の悪い揚げ物、食べ過ぎ)、翌朝の腸は疲弊した状態で一日を始めることになります。

朝の食卓でできること

まず、白湯を一杯

起き抜けの体は軽い脱水状態にあります。白湯をゆっくり飲むことで、眠っていた腸が目覚め、動き始めます。冷たい水ではなく白湯である理由は、腸を冷やさないためです。体温に近い温度の水が、腸にはいちばんやさしい。

わが家では、朝いちばんに白湯を飲むのが小さな儀式になっています。娘が「お湯ちょうだい」と言うと、腸が目覚める合図のようで、なんだかうれしくなる。

朝食に発酵食品をひとつ

朝の腸に善玉菌を届けることで、一日の腸内環境のスタートラインが変わります。納豆でも、本物の味噌で作った味噌汁でも、ぬか漬けでもいい。どれかひとつを朝食に加えるだけで、腸の機嫌は変わります。

朝日を5分、浴びる

朝日を浴びることで体内時計がリセットされ、セロトニンの分泌が促されます。ベランダでも窓際でも、5分外の光に当たるだけで効果があります。腸の話ではありませんが、朝のイライラに対してこれほど即効性のある習慣はなかなかない。食事と組み合わせると、相乗効果があります。

夜の食卓が、翌朝を決める

朝のイライラを減らすためには、実は前夜の食事が鍵を握っています。

腸に負担をかける夜食を続けていると、朝の腸は疲れた状態で目覚めます。逆に、夜に腸にやさしい食事をとると、翌朝の目覚めがはっきりと変わります。

根菜たっぷりの出汁から作った味噌汁、発酵食品、できれば早めの夕食——。「朝のイライラを減らしたい」と思ったとき、答えは朝ではなく前夜の食卓にあることが多いのです。

はやま

朝に怒鳴ってしまっても、自分を責めないでください。腸が怒っているだけです。そして腸の機嫌は、食卓で整えられます。今夜の味噌汁が、明日の朝のあなたを少しやさしくしてくれます。朝のイライラは、努力ではなく「整える」ことで変わります。あなたはもう十分がんばっているから。

眠りの質と朝の状態の関係についてはこちらの記事も参考になります。朝のイライラの背景に、睡眠の問題が隠れていることも少なくありません。