奥さんから送られてきたURLを、なんとなく開いたお父さんへ。あるいは偶然、この記事を読んでいるお父さんへ。
このブログはふだん、台所を切り盛りする人に向けて書いています。だから読んでいるのは大抵、子育て中のお母さんです。書いている僕自身は、家族の夕飯と弁当を作る父親です。五分あれば読めますので、もう少し読んでみてください。
ひとつ聞かせてください。あなたはいま、自分の体のことを後回しにしていませんか。
ぽっくり逝ければ本望だよと笑う人がいます。気持ちはわかる。僕も時々思う。でも現実はそう都合よくはできていません。
脳卒中や心筋梗塞で倒れて、命が助かったとします。けれど半身が動かなくなることがある。言葉が出なくなることがある。ある日から自分でトイレに行けなくなる。それが十年、十五年と続く。
そのときそばで支えるのは誰でしょうか。奥さんが仕事を辞めて、介護に回るかもしれない。子どもたちの暮らしにもじわじわと影が差す。倒れたお父さんの存在が、家族みんなの未来を静かに塗り替えていきます。
死ぬことより体の自由を失って長い余生を生きるほうが、本人にも家族にもずっとこたえる。そういう現実を正面から考えてみたことはありますか。
脅かしたいのではありません。僕はそれを何度も間近で見たのです。
以前、入院していたとき、はす向かいのベッドの男性が夜ごと叫び声を上げていました。糖尿病の合併症で片足を切ったばかりの人でした。足はもうない。でも脳はまだ足があると思っていて、焼けるような痛みの信号を送り続ける。幻肢痛、というものです。ありもしない足が燃えるように痛む。のたうつ。それが何時間もやまない。その声を眠れないまま、僕はずっと聞いていました。
糖尿病は初めのうち、これといった症状が出ません。少し太ってきたかな、近ごろ疲れやすいかな——その程度の顔をして、何年も静かに進みます。気づいたときには、目に、腎臓に、神経に合併症が広がっている。あの晩の叫び声はその果てにあるものでした。うちのパパ友にも、同じ病を抱えた人がいます。僕よりいくつか年下です。
もうひとり、こちらは仕事一筋で生きてきた昭和の父親です。引退したらゴルフ三昧、旅行三昧だと、それを励みに長い勤めを耐えてきた人でした。ところが引退したとたん、体のあちこちが壊れた。手術を重ねたけれど、足が痛くてもうまともに歩けない。好きだった酒もとうにやめた。夢だった、接待ではないただ楽しむためのゴルフはとうとう一度も叶っていません。
作り話ではありません。義父の話です。正直に打ち明けると、仲の良い義父ではなかった。それでも心底、気の毒だと思う。
別の親族は退職して、これからは趣味に生きるぞと車を買い替えたその矢先に脳卒中で倒れました。
男性の平均寿命と健康寿命の差はおよそ八年半あります。生きてはいるけれど、健康ではない時間が人生の最後にそれだけ横たわっている。やりたいことができない。誰かの手を借りなければ暮らせない。「引退してから楽しめばいい」と思っていても、そのとき体が動く保証はどこにもない。
では、どうするのか。今日から全部を変える必要もない。たったひとつ、腸を大事にする。それだけです。
体の免疫細胞のおよそ七割は腸に集まっています。血糖のことも、気分の浮き沈みも、疲れの抜けやすさも、太りやすさも、めぐりめぐって腸の調子とつながっている。その腸を整えるのに、まずは三つだけ。
ひとつ。朝、味噌汁を飲む。温かい一杯は、腸に棲む菌たちにとって最高の朝ご飯です。和食には長い時間をかけて磨かれた、腸にやさしい知恵が畳み込まれている。
ふたつ。ご飯をよく噛む。三十回が理想と言うけれど、そこまでしなくていい。いつもの倍でいい。それだけで、血糖の上がり方がゆるやかになり、胃腸の負担は減る。満足感を得やすくなる。
みっつ。梅干し一個を毎日食べる。酸味で唾が湧き、消化を助けます。ご飯が進んで、自然とよく噛む。塩気と酸っぱさが鈍った食欲を呼び戻す。何百年も日本の食卓を支えてきた、それだけで信じるに足る一品です。塩だけか塩と紫蘇だけで漬けた昔ながらのものを。血圧が高いと言われている人は小さめのものを選んでください。
食卓アドバイザーという仕事をしていると、健康に無頓着なお父さんを持つお母さんからよく相談が届きます。みんな心配しているのです。ほかの誰でもないあなたのことを。
家族のためになんて言うと、照れくさいでしょう。それなら、自分の人生の後半戦のためと思えばいい。まだやり残したことがあるなら、それを、自分の足と手で最後までやり遂げるために。
今日、ひとつだけ。味噌汁でも何口か多く噛むことでも梅干し一個でもいい。その小さなひとつを、奥さんはたぶん黙って見ています。あなたが長く元気でいることを、いちばん願っている人がすぐそこにいます。
※このブログの情報は、医療機関の監修を受けておらず、病気の診断、治療、予防を目的とするものではありません。記事内でご紹介している効果効能についても栄養素や成分に関するものであり、商品やサービスに関するものではないことにご注意ください。体調不良が長く続く場合は、医療機関で相談することも大切です。食卓でできること、専門家の力を借りること、その両方が、あなたの体を支えます。

