「栄養が足りていないか心配です」——食卓アドバイザーはやまに相談してみたら

和食

「持病の治療に専念しているなかで、自分なりに食事を工夫しているのですが、一日に必要な栄養素の摂取量を見るたびに不安になります。この量を守らないといけないのでしょうか」

こんな相談をいただきました。仕事を休んで治療に向き合っている方からです。

自分の体のことを真剣に考えているからこそ、たどり着く不安だと思います。まずそのことを、受け取らせてください。

はやま

食事のことを一生懸命調べてきた方だということは、文面からよく伝わりました。その真剣さは、すでに大事なものだと思います。

相談内容を、もう少し詳しくご紹介します。

一日一食(夕食のみ)で、キャベツ・大根・にんじん・たまねぎ・きのこ・豆腐・納豆を召しあがっている。炭水化物はりんごのストレートジュースのみ。サプリメントはオメガ3、ビタミンC、ビタミンB群、マルチビタミン&ミネラル、CoQ10、酵素、乳酸菌、カルシウムと、かなり充実している。

「この内容を見ると、栄養不足かもしれないと不安になります」というのが、ご相談の主旨です。

「一日の必要摂取量」は、誰のための数字か

まず正直に言います。わたしは食卓アドバイザーであって、医療従事者ではありません。持病の治療中という状況で「これで大丈夫」とも「こうすべき」とも申しあげる立場にないし、判断する材料もありません。

でも、ひとつお伝えできることがあります。

「一日の必要摂取量」という概念について、わたしが知ってから見方がまるで変わった考え方があります。

断食療法や小食健康法の研究・実践で知られた医師、故・甲田光雄先生は、こんな趣旨のことを繰り返しおっしゃっていました。現代栄養学が推奨するカロリーや栄養素の量は、机上で計算されたものであって、人間の体のしくみに沿ったものではない。体にいいものをたくさん食べるほどいい、という考え方は間違っている。いくら良質な栄養素でも、食べすぎれば害になる、と。

同様の見解は、断食指導医として知られる石原結實先生の著書にも繰り返し登場します。

つまり「推奨摂取量を下回っている=栄養不足で危険」という図式は、かならずしも成り立たないということです。特定の療法に取り組んでいる場合はなおさら、一般向けの基準をそのまま当てはめることに意味がないこともある。

はやま

「必要摂取量」の数字は、健康な成人が一般的な生活をする場合の目安です。治療中の食事プロトコルとは、そもそも土台が違います。

食卓アドバイザーとして、気になったこと

医療的な判断はできませんが、食の観点から率直に感じたことをお伝えします。

よいと思った点

納豆と豆腐が毎日入っているのは、なかなかいいと思います。納豆は発酵食品として腸内環境を整える働きが期待でき、大豆由来のタンパク質も摂れる。豆腐と合わせれば、植物性タンパク質としての土台はある程度つくれています。きのこ類も毎日入っているのは、免疫機能のサポートという意味でもうれしい食材です。

気になった点

炭水化物源がりんごジュースのみ、というのは少し気になります。果糖は体に入ると素早く処理される糖なので、エネルギーとしては使われますが、持続性という点では穀物の複合炭水化物とは性質が異なります。体がエネルギー不足のサインを出していないか(ぼんやりする、集中できないなど)、ご自身の感覚を丁寧に観察してみてください。

それから、サプリメントの種類と量がかなり多いですね。それぞれに意図があって選んでいらっしゃると思いますが、複数のサプリを同時に大量に摂ることで、成分同士が干渉したり、特定の成分が過剰になったりするリスクもゼロではありません。現在の治療を担当している先生がいれば、サプリの内容もあわせて相談されることをおすすめします。

食卓に、もう少し「発酵」を

納豆は素晴らしいスタートです。もし可能であれば、味噌をお味噌汁として加えてみてはどうでしょう。今の野菜類(キャベツ、大根、にんじん、たまねぎ、きのこ)は味噌汁の具材としても優秀です。一石二鳥で、発酵食品と温かい汁物の両方を取り入れることができます。

腸の状態が整うと、同じ食事からでも栄養の吸収効率が変わってきます。不足を「足す」より先に、「腸が受け取れる状態か」を整えることのほうが、まず大事だとわたしは思います。

不安との付き合い方

「栄養が足りていないかもしれない」という不安そのものが、じつは体に負担をかけることがあります。ストレス状態が続くと、消化吸収の効率も落ちるし、体の回復力も下がる。食べているものと同じくらい、食べるときの心の状態は大切だとわたしは感じています。

数字が気になるときは、一度その数字から目を離してみてください。今日の自分の体はどうか。疲れているか、軽いか。食後は気持ちがいいか、重いか。そういう問いのほうが、栄養素の計算より、あなたの体の正直なところを教えてくれるかもしれません。

どうしても専門的なアドバイスが必要であれば、断食医や食事療法に詳しい医師に相談するのも手です。一般的な栄養士さんよりも、治療中の特殊な食事プロトコルに慣れている先生のほうが、状況に合った言葉をくれると思います。

はやま

とにかく無理はなさらずに。体を壊したら、元も子もありませんから。どうかお大事に。