この数日、歯が痛い。尋常ではなく痛む。日々、その痛みは強くなっている。もうかれこれ一週間、ろくに眠っていない。
毎夜、ベッドで横になると右下の奥の親知らずがじんじん痛むのだ。我慢できるレベルではない。氷を口の中に放り込み、舌で患部に押し当てて感覚を麻痺させる。それでいったん痛みは引く。けれど数分後にはまた戻ってくる。同じことを繰り返し、朝を迎えていた。
不思議と日中は痛みが治まっていた。睡眠不足でどうしようもなく体がだるいときは、午後に九十分か百八十分の仮眠を取り、この数日やりすごしてきた。
ところが今夜はもうどうにもならない。なにしろ唯一の頼みの綱の氷が効かない。
なぜ歯医者に行かないのか。当然の疑問だろう。まずとても忙しかった。それより何より、数年前から虫歯に自力で対処できる方法を身につけていたからだ。
この記事に書いていること
初期の虫歯は重曹で
現代の医学ではいったん虫歯に浸された歯は元には戻らないということになっている。僕もずっとそう信じていた。だからドリルでガリガリやって詰め物をしたりするわけだが、穴が開く手前——表面がうっすら白く濁ったり、黒ずみかけたりしただけのごく初期の段階なら、話がちがってくるらしい。
重曹を使うのだ。
すると虫歯が消え、削れた部分の修復と再石灰化が起きる。何かの本で読んで実践したら本当にそのとおりだったのだ。しつこくうがいをしていると痛みが減っていく。それを繰り返していると、やがて痛みが消滅し、いつしか虫歯そのものが消えている。
そんなこととはつゆ知らず、虫歯になるたびにキュイーンという耳障りな音を聞き、小さい頃からあっちこっちに詰め物や被せものをしてきた。セラミックやジルコニアの差し歯も少なからずある。もっと早く知りたかったと舌打ちがやまなかった。
とはいえ、ものには限度というものがある。あまり破損が大きいとどうにもならないようだ。黒くえぐれて穴の開いた歯が、重曹水のうがいで元どおりになることはない。
いずれにしろ、この手当て法を知ってから、僕は歯が痛みだすと水十に対し重曹一を溶いて飽和重曹水を作り、それで執拗にうがいする。そうやって虫歯に対処してきた。
氷すら効かず、自然療法にすがる
今回はそれを怠っていた。結果、重曹ではもはや対処できなくなっていた。頼みの氷すら、今夜はもう役に立たない。むしろ滲みる。激痛にのたうち回る羽目になる。いっそのこと、ペンチで親知らずを抜いてしまおうかと、何度も本気で思案したくらいだ。
痛みは常時あるわけではないのだ。数分間に一分くらい、らくになる時間がある。その時間だけまともに思考できた。だから僕は本棚の書物を片端から手に取り、素早くページをめくっていった。歯痛への対処法を探していたのだ。
自然療法の本が、梅干しの黒焼きと焼き塩を勧めていた。
梅干しの黒焼きは作るのに五、六時間かかる。却下。
焼き塩は五分。採用。正露丸より良いとまで書いてある。
手元にあった天然塩をすぐさまフライパンにバサッと入れ、中火で五分ほど炒った。黄色く色づいた頃合いで取り出し、それを口に入れた。患部に当てろと書いてあるが、ぱらぱらの塩を奥歯にぴたりと当てるのは難しい。ひとつまみの塩を口に放り込み、右下の奥歯のあたりに移動させてそのままにした。
焼き塩で激痛がうそのように引いた
半信半疑だった。
ところがてきめんだった。実は一時間前に鎮痛剤を飲んでいたのだが、まったく効かなかった。そんな強烈な痛みが引いていった。
——なんだこれは。
十回ほど焼き塩を口の中に放り込んだら痛みが戻ってくることはなくなった。これなら眠れそうだ。ベッドに横になるとそのまま八時間、ぐっすり眠ることができた。
この一週間の痛みとの戦いはいったいなんだったのか。こういうことがあるから、僕は昔の人たちの知恵に頭が上がらないのだ。
塩が雑菌の繁殖を抑えることはよく知られている。ぬか床しかり、味噌しかり、ほとんどすべての発酵食品がその力を借りて作られる。
では、痛みまで抑えてしまうのはなぜか。調べてみると、からくりの一端が見えてきた。
焼き塩は、腫れと感染を抑える
親知らずの痛みは大抵、歯そのものより周りの歯ぐきが感染して腫れることから来るらしい。そこへ塩を当てると、浸透圧で腫れた組織に溜まった余分な水が外へ吸い出される。ダムの水を抜くように、腫れが引く。神経を圧していた圧力が下がり、痛みがやわらぐのだ。
おまけに、これほど塩辛い場所では雑菌も生きづらい。ぬか床の乳酸菌が塩に守られて、余計な菌が淘汰されるのと同じ理屈である。
重曹のほうは、酸を抑える。口の中が酸性に傾くと歯が溶けやすくなるが、弱アルカリの重曹はそれを中和する。
昔の人たちは、浸透圧だの中和だのという言葉をひとつも知らなかったが、知らないままにこうした手当てを受け継いできたのだ。
そう思うと、やっぱり頭が下がる。

あくまで一個人の体験談です。体質やそのときの体調、環境などによって再現性がどの程度見込めるのかはまったく不明です。今日の驚きを書き残しておきたくて記事にまとめたにすぎません。高血圧などで塩分の摂取を控えているなら、素直に歯科で診てもらってください。そうでなくとも歯科で定期健診を受け、今回の僕のような逼迫した事態に陥らないよう、日頃から心がけるべき。自戒の念を込めて——。
※このブログの情報は、医療機関の監修を受けておらず、病気の診断、治療、予防を目的とするものではありません。記事内でご紹介している効果効能についても栄養素や成分に関するものであり、商品やサービスに関するものではないことにご注意ください。体調不良が長く続く場合は、医療機関で相談することも大切です。食卓でできること、専門家の力を借りること、その両方が、あなたの体を支えます。
