プレバイオティクスとは——腸内環境を整える「善玉菌のエサ」完全ガイド

プレバイオティクスの食材たち

体調を崩したとき、僕が最初に見直したのは食事だった。荒れた庭を手入れし直すように、台所から整えようと思ったのだ。何が正しいのかよくわからず、あれこれ試しては迷走した時期もあった。それでも和食への信頼だけは揺らがなかった。

子どもの頃、実家の食卓はいつも和食で、二十代で食生活が乱れて体調を崩したときも、数日母の料理を食べるだけで不思議と元気になった。あの感覚がずっと体に残っていたのだろう。

体を壊してから、僕は和食中心の生活に戻した。朝はご飯と納豆、味噌汁、干物。夜は一汁三菜に根菜の煮物やひじき、きんぴらを添える。そこにぬか漬けが加わり、ヨーグルトやオリゴ糖も自然と食卓に並ぶようになった。腸が体に与える影響の大きさを知ったからだ。

すると僕より先に妻と娘のほうが健康になった。風邪を引きにくくなり、妻は体型が変わり、健康診断の数値が軒並み良くなって医者に驚かれたという。振り返ると、あの頃の食卓は腸の善玉菌を育てる食材ばかりだった。

腸活というと、ヨーグルトや乳酸菌飲料のように、菌を届けるプロバイオティクスが注目されがちだ。でも、腸の中にエサがなければ善玉菌は増えない。菌を届けるのがプロバイオティクス、菌を育てるのがプレバイオティクス。この二つがそろって初めて、腸の奥に小さな花畑が育ち始める。

プレバイオティクス

プレバイオティクスは、善玉菌のエサ

プレバイオティクスとは、胃や小腸で消化、吸収されずに大腸まで届き、腸内の善玉菌——ビフィズス菌や乳酸菌の栄養源となる食品成分のことだ。1995年、イギリスの微生物学者ギブソンらが提唱した概念で、プレバイオティクスと認められるためには次の条件を満たす必要がある。

消化管上部で分解、吸収されないこと。大腸に共生する有用な細菌の栄養源となること。腸内フローラを健康的なバランスに改善、維持できること。宿主である人間の健康に有益な効果をもたらすこと。

この条件を満たす食品成分として認められているのが、オリゴ糖と水溶性食物繊維の一部である。

プレバイオティクスの種類

① オリゴ糖

フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ラフィノース、キシロオリゴ糖など、さまざまな種類がある。腸内細菌にも好みがあり、種によって好む菌は異なる。複数のオリゴ糖をブレンドして摂るのが効果的だ。オリゴ糖についてはこちらの記事がくわしい。

② 水溶性食物繊維

オリゴ糖と並ぶプレバイオティクスの主役。代表的には次のようなものがある。

イヌリン
ごぼう、玉ねぎ、にんにく、菊芋、チコリに豊富に含まれている水溶性食物繊維。腸内で発酵して善玉菌のエサになるほか、血糖値の上昇をゆるやかにする働きもある。ごぼうには3.5〜4%ほど含まれている。

グルコマンナン
こんにゃくの主成分。消化されにくく、大腸まで届いて善玉菌のエサになる。整腸作用が強く、血糖値や血中コレステロールの上昇を抑えてくれる。

βグルカン
きのこ類(椎茸、舞茸、えのきなど)や大麦、オーツ麦に豊富。善玉菌のエサになるほか、免疫細胞を活性化する働きもよく知られている。

アルギン酸
昆布やわかめなどの海藻類に含まれる水溶性食物繊維。腸内フローラの改善に役立つほか、重金属などの排出を助ける作用もある。

レジスタントスターチ(難消化性デンプン)
冷めたご飯や冷めたじゃがいもに多く含まれるでんぷん。加熱後に冷ますことで構造が変化し、小腸で消化されにくくなる。腸内で発酵し、腸粘膜を保護する短鎖脂肪酸(酪酸)を産生する。

プレバイオティクスが豊富な食材

プレバイオティクスは特別なサプリメントを使わなくても、日頃の食事から十分に摂取できる。意識して取り入れたい食材は次の通りだ。

分類食材おもなプレバイオ成分
根菜類ごぼう、蓮根、菊芋イヌリン(ごぼうにとくに多い)
野菜類玉ねぎ、キャベツ、にんにく、ニラ、アスパラガス、葉物野菜全般フラクトオリゴ糖、イヌリン
果物バナナ(とくに少し青いもの)フラクトオリゴ糖、レジスタントスターチ
豆・発酵食品大豆、納豆、味噌大豆オリゴ糖+食物繊維
海藻類昆布、わかめ、ひじき、もずくアルギン酸、フコイダン
きのこ類椎茸、舞茸、えのき、なめこβグルカン
穀物類大麦、オーツ麦、冷やご飯βグルカン、レジスタントスターチ
こんにゃくこんにゃく、しらたきグルコマンナン

我が家が食事を見直したとき、特別なものは何も買わなかった。実家で昔、当たり前に食べていたものに戻っただけだ。根菜の煮物、海藻の味噌汁、納豆ご飯、きのこの炒め物——。プレバイオティクスの宝庫だった。

腸活のために新しい何かを買い足す前に、和食の一汁三菜に戻るというのも手っ取り早くて、合理的な選択肢のひとつだろう。

一汁三菜、根菜の煮物、海藻のみそ汁、納豆ご飯、きのこの炒め物

プレバイオティクスの効果

プレバイオティクスには、以下のような効果があるとされている。

腸内フローラの改善・整腸作用
ビフィズス菌や乳酸菌を増やし、悪玉菌を抑制する。便通が改善し、腸内環境が整う。

短鎖脂肪酸の産生
腸内細菌がプレバイオティクスを発酵、分解する際に、短鎖脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸など)が生成される。なかでも酪酸は腸の粘膜細胞のエネルギー源となり、腸の炎症を抑えて、腸のバリア機能を高めてくれる。

免疫機能の向上
腸内フローラが整うと免疫細胞が活性化される。アレルギーの発症予防に関しても、プレバイオティクス(とくにイヌリンとケストースの組み合わせ)の効果が最新の研究で報告されている。

血糖値とコレステロールの管理
水溶性食物繊維は糖質の吸収をゆるやかにし、食後血糖値の急上昇を抑えてくれる。コレステロールの吸収抑制効果も報告されている。

効果的な摂取方法

朝に摂るのがおすすめ

腸内細菌は体内時計に応じて活動リズムが変化する。朝食時に食物繊維を摂取すると、腸内フローラの多様性が上がり、悪玉菌の繁殖が抑制されやすいという報告がある。朝は前の食事から時間が空いており、腸の蠕動運動が活発になっているため、腸内細菌も食物繊維を利用しやすい状態にあるからだ。

プロバイオティクスと一緒に摂る(シンバイオティクス)

プレバイオティクス(エサ)とプロバイオティクス(善玉菌)を同時に摂ることを「シンバイオティクス」という。善玉菌を届けながら、そのエサも同時に補給できるため、腸内環境の改善効果がぐっと高まる。

組み合わせの例として、ヨーグルト(プロバイオ)+バナナやオーツ麦(プレバイオ)、納豆(プロバイオ)+玄米やごぼうの副菜(プレバイオ)、味噌汁(プロバイオ)+わかめや根菜(プレバイオ)などが挙げられる。

摂りすぎには注意

プレバイオティクスは過剰摂取するとガスが発生しやすくなり、お腹の張りや不快感につながることがある。サプリメントで摂る場合は用量を守り、食事からの摂取を基本にすると良い。

まとめ

プレバイオティクスとは、腸の奥で善玉菌を育てるための栄養だ。根菜、海藻、きのこ、発酵食品——どれも昔から日本の台所にあったものばかり。特別なことをしなくても、和食の一汁三菜を意識すれば、僕らの体はゆっくり変わっていく。

毎日の食卓にひとつだけ、腸の仲間が喜ぶものを置いてみる。手軽だが豊かなお腹のガーデニングだ。

そうしてある朝ふと、体が軽くなっていることに気づく。自分の手で耕した腸の奥で、小さな花畑が育ち始めた証拠である。